Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月18日 No.3405  提言「2040年を見据えた社会保障の安心確保に向けて」を公表

経団連は4月16日、提言「2040年を見据えた社会保障の安心確保に向けて」を公表した。

2040年にかけて少子高齢化が進展するなか、医療・介護サービスに対する需要増やニーズの多様化が想定される一方、当該分野の担い手確保が困難となる見込みである。提言は、こうした状況を見据え、今後の社会保障の安心の確保に向けて求められる具体的な施策について、経団連の考え方を取りまとめたもの。

■ 医療・福祉サービス改革を通じた生産性の向上

介護分野を中心に人材確保がますます困難となる見込みのなか、イノベーションを利活用し生産性を高める視点が不可欠である。具体的な方策として介護現場におけるロボット、センサーの活用がある。この推進に向け、当該技術の活用による効果やメリットに関するエビデンスの構築と「見える化」の推進、開発から改善に至る一貫性のある政府支援策などが求められる。また、介護記録システム等のICTの利活用や、AIによるケアプランの作成等を推進する必要性も大きい。

加えて、行政手続きの簡素化も求められる。現在、自治体ごとに様式等が異なる各種申請手続きが介護現場で大きな負荷となっていることから、その統一を図るとともに、国主体で、地方を巻き込んだ一元的な情報システムを早急に構築することが必要である。

■ 健康寿命のさらなる延伸

健康寿命の延伸は、個人の人生の満足度を高めるのみならず、高齢者の社会参加の推進を通じて、経済・社会の活力の維持・向上に資する。健康寿命延伸に向けては、最新の知見に基づき各施策を実施することが効果的である。このため、ライフコース全般にわたる健康、医療、介護データ等のデータ活用の基盤を整備しエビデンスを構築することが不可欠である。こうしたエビデンスは「保険者努力支援制度」等の各種インセンティブ施策をより効果的な方向に見直すうえでも有効となる。

また、健康増進に関連した施策のうち、特に公費や保険料が投入されている施策については、目的に照らし確実な成果が得られているか、不断に効果検証を行うことが不可欠である。

■ 将来の医療・介護ニーズの変化を見据えた取り組み

近年、認知症高齢者の増加や高齢者単身世帯の比率の上昇への対応が重要な社会的な課題となりつつある。経団連社会保障委員会を対象にアンケートを実施したところ、今後求められる認知症政策の方向性として、認知症に関する正しい知識の普及・啓発、認知症高齢者の生活の安心確保、革新的な治療薬等の研究開発の推進に向けた環境整備等の声が聞かれた。

また、あらゆる場所で質の高い医療サービスへのアクセスを確保する観点からは、オンライン診療・服薬指導の推進などの重要性も高まる。

■ 持続可能な社会保障の確立に向けて

社会保障制度の持続可能性を確保するうえで、給付と負担の適正化に向けた議論も不可避である。経団連では引き続き、財源、給付のあり方も含めた包括的な検討を続け、今後提言を行っていく。

【経済政策本部】