Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年4月25日 No.3406  イトーヨーカ堂におけるユニバーサルデザインの取り組みについて聞く -生活サービス委員会ユニバーサル社会部会

経団連は4月8日、東京・大手町の経団連会館で、生活サービス委員会ユニバーサル社会部会(河本宏子部会長)を開催し、イトーヨーカ堂CSR・SDGs推進部の強矢健太郎マネジャーから、同社の店舗におけるユニバーサルデザインの事例を中心に聞くとともに懇談した。
説明の概要は次のとおり。

イトーヨーカ堂では、グループ全体として、ESG(環境・社会・ガバナンス)視点による社会課題の解決、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を意識して活動している。とりわけ、超高齢社会を迎えた日本にとってユニバーサルデザインは必要不可欠であることから、多様なステークホルダーとの共生を図りながら取り組みを進めている。

1990年代には、「誰もが快適に利用できる暮らしの拠点」としてバリアフリー・ノーマライゼーションを進めた。スロープや多目的トイレを設置するのはもちろん、新しい店舗の開店前に、地域の高齢者や障がい者など特別な配慮を必要とする利用者を招き、店舗施設見学会を開催した。事前に生の意見を聞くことで店舗の改善を図るほか、次の店舗の出店にも活かしてきた。

2000年代には、さらに踏み込んで「お身体の不自由な方だけでなく、健常者をはじめ、お年寄りからお子さままで、身体能力の違いにかかわらず、多様な人々が安心して利用のできるユニバーサルデザイン」の考え方を取り入れた店舗づくりを進めた。高齢者や子どもに対応できるよう、低いサービスカウンターとする、あるいは、衣類やバッグが引っかからず壁の色と識別しやすいよう終端部を曲げた手すりとするといったものがその代表例である。

近年では、より快適な店舗づくりを追求し、タッチ式案内パネルや困ったときに誰でも押すことのできる「お問い合わせコール」を設置するとともに、トイレと休憩室には徹底的にこだわり、従業員用も含め、ラウンジやパウダールームを充実させている。さらに、企業として社会的責任を果たすうえでは、環境への配慮も重要であることから、LED照明や太陽光発電パネル等の使用を進めるほか、店舗内に「ECO&UDコーナー」を設け、その取り組みを紹介している。ショッピングセンターが有する「買う」という機能に加え、「集う」「学ぶ」といった豊かな暮らしを届ける「コミュニティー」としての役割も持つことで、施設全体の魅力を高めていきたい。

また、ハード面での整備とあわせ、ソフト面での取り組みがそろうことでユニバーサルデザインが完成することから、従業員向けの研修も充実させており、サービス向上を目的とした手話講習会や、外国籍労働者への日本式接客の教育も実施している。

今後は、社会全体にユニバーサルデザインの考え方を浸透させる機会を提供するとともに、あらゆる人々の不便さや不自由さをより細かな視点で把握し、さらに先進的な取り組みに反映させていく。

【産業政策本部】