Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年5月23日 No.3408  「持続可能なまちのあり方」~地域経済構造分析の視点より -岡山大学大学院の中村教授が説明/地域経済活性化委員会企画部会

経団連は4月22日、都内で地域経済活性化委員会企画部会(田川博己部会長)を開催し、岡山大学大学院の中村良平教授から、地域ならではの産業振興・経済活性化へ向けた考え方について、地域経済構造の分析方法とあわせて説明を聞くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

地域振興や活性化、まちづくりに関する書物は、事例中心で具体的な方法論・戦略論がなかったり、データをただ分析するだけ、あるべき論だけ、他者の施策を評論的に評価するだけのものがいまだに多い。まちを持続可能にするには、まず、まちの中と外、企業と企業、企業と消費者といった、経済でいうところの「連関のかたち」を把握し、まちの構造を変えていく必要がある。

「公共事業をしてもいま一つ恩恵がない」「企業を誘致しても思ったように所得が増えない」のは、まちの中と外との付き合いに問題があるからだ。まちが寂れたのは、技術の進歩や交通の進歩に対して産業構造の改革ができず、域外から稼ぐ力を失った結果である。(現在、限界集落となっているような中山間地でも、石炭産業が中心のころや、高速交通網が発達していなかったころのように、産業構造がプリミティブな時代には栄えていた)まちは、外から稼ぐ力を持っていなければ持続可能にならず、域外で稼いだお金がまちのなかで消費され、さらにそのお金が巡るほど、まちは発展する。一方で、稼いだお金がまちから漏れてしまっていると実質的な豊かさは得られない。

まちづくりを進めるにあたっては、新しく稼ぐ力を生み出すために、まちのなかの企業間あるいは産業間でどういったつながりがあるか、地域独自の産業連関表を作成して、それを読み解いていくことが重要である。その際、客観的なデータを規範的な基準でとらえることが不可欠だ。規範的な基準とは、「所得が高いと小売販売額も大きくなる(はず)」「資本装備率が高いと労働生産性も高まる(はず)」というような、経済学の理論にのっとった誰が考えても同様に理解できる基準である。例えば、高齢化率と要介護率、高齢化率と1人当たり医療費等、さまざまな基準にデータをプロットしていくと、各市・各町で回帰線からバラつきが出てくる。回帰線から外れている原因を突き詰めて分析していくことで、まちづくりの有効な施策につなげていくことができる。

まちの構造をどう変えていくか検討を深めていくと、単一の市町村だけではできないことも出てくる。例えば、愛媛県松山市の近隣2市2町では、常住就業者数の3~4割が松山市に通勤をしているが、就業圏域全体で補完しあっているものを単一市町村でくくり直すことは難しい。これは連携中枢都市圏構想を進めるうえでも持ち上がる課題であり、地域経済の発展を目指すうえでは、圏域全体で施策立案を進められるような仕組みも検討していく必要がある。

【産業政策本部】