21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は5月15日、東京・大手町の経団連会館で、シンポジウム「CEが目指すもの―Circular Economyがビジネスを変える」を開催した。
同研究所の研究プロジェクト「Circular Economy(CE)研究会」(研究主幹=梅田靖東京大学大学院教授)が、研究成果として公表した報告書の内容を中心に、研究委員が説明した。
また、今後、日本におけるサーキュラーエコノミーについての研究を深めていくため、席上でCEの取り組み状況についてのアンケートを実施。68名の回答があり、「CEへの対応をすでに実施している」が29.4%、「検討を始めている」が48.5%と参加会員の関心の高さが明らかになった。説明の概要は次のとおり。
■ 研究会の目的と概要(梅田靖研究主幹)
当研究会の目的は、欧州CE政策、特に、市場経済のCE化が、日本企業の事業活動や産業競争力に影響を及ぼし得るリスクについて、現状把握と対応方針を調査することである。今年1月の欧州視察調査では、CE政策が具体的な指令・法規制等に盛り込まれ始めており、これに対し企業側が、設備保全プラットフォーム戦略と地域資源循環ソリューション戦略等を経営戦略として実践し始めていることが把握できた。
CE政策は従来型のEU環境政策と異なり、経済の仕組み自体を変えようとする政策である。公表した報告書では、「CEで今後起こり得ること」として、11項目を提示したので、参照いただきたい。
■ サーキュラーエコノミーをめぐる欧州の動き(喜多川和典研究委員)
欧州のCE政策の主なねらいは、欧州の環境サービス業等をグローバルレベルで成長・発展させたいとする戦略である。ISOで今後策定する新規格の影響は、ビジネスモデルの転換および開発の促進、製品の全ライフサイクルの管理、サプライチェーンマネジメントにまで広がることが推察される。CE政策の一環として、海洋汚染問題の解決とプラスチックの持続可能な利用実現を目指し、欧州プラスチック戦略を公表するなどリサイクル政策を推進しており、日本は国際的に後手に回ることのないように、十分な注意が必要である。
■ サーキュラーエコノミーとデジタル変革がもたらす新しい欧州型ビジネスモデル(廣瀬弥生研究委員)
欧州を中心にCEとデジタルを融合させて、競争優位性をねらう取り組みが進んでいる。日本企業としては、新たなプラットフォーム上のサービスを議論するなど、中期的なビジネスモデルの検討を深めていく必要がある。プラットフォーム戦略では、主導権を取ること、国際標準化戦略とデータ蓄積を重視することが重要である。日本として提起したい問題を明確にしたうえで独創的な解決策を発信する必要があり、そのためには社内のコミュニケーションが成功のカギを握る。
■ サーキュラーエコノミーを実現するためのシステム技術(梅田靖研究主幹)
ものづくりでCEを実現するためにはライフサイクル工学の実装が必要である。製品の一生(ライフサイクル)を設計するためには、さまざまな循環シナリオが考えられる。例えば、製品が捨てられる理由が物理寿命か価値寿命かであるかで大きく違ってくる。このような適切な循環を適切にマネジメントする「循環プロバイダー」の存在が重要になってくる。
■ サーキュラーエコノミーに向けた日本企業の取り組み事例(赤穂啓子研究委員)
当研究会では、CEの取り組み事例として、メーカー、リサイクラーなど7社にインタビューした。各社ともCEを明示していなかったが、「サステナブル経営を考えるうえでCEの考え方は不可欠である」と指摘した。ビジネスチャンスとしては、信頼性や保守性などの日本企業の強みを活かせること、リスクとしては、コストが一時的に増えることへの抵抗などが挙げられた。
【21世紀政策研究所】