気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の採択(2015年12月)以降、世界の金融業界では、気候変動が投融資先の事業活動に与える影響を評価する動きが高まっている。
17年6月には、各国の中央銀行・金融監督当局等で構成される金融安定理事会(FSB)が設置する「気候関連財務情報開示タスクフォース」(Task force on Climate-related Financial Disclosures、TCFD)が、最終報告書「TCFD提言」を公表した。同提言は、企業に対し、中長期の気候変動に起因する事業リスクと機会、これらの財務状況への影響、具体的な対応・戦略等を開示することを推奨している。
こうしたなか、わが国では、TCFD提言に賛同する事業会社と金融機関等との対話を促すための「TCFDコンソーシアム」(発起人代表=伊藤邦雄一橋大学特任教授)が発足し、経団連の中西宏明会長も発起人の一人として加わっている。5月27日に都内で開催された設立総会では、62企業・機関が新たに提言への賛同を表明したことにより、日本の賛同数は世界一(162企業・機関)となった。
設立総会には、政府を代表して世耕弘成経済産業大臣と原田義昭環境大臣が出席した。世耕経産相からは、コンソーシアムの活動を通じた「環境と成長の好循環」実現に向け、提言に沿った開示を円滑に行うための「TCFDガイダンス」のさらなる充実や、金融機関における開示情報の活用拡大、今秋の「TCFDサミット」開催を通じた日本のグリーンファイナンスの取り組みの世界への発信等への期待が表明された。原田環境相からは、コンソーシアムの活動が日本企業のTCFD提言への対応を加速させ、環境・社会・ガバナンス要素を投資判断に組み込むESG金融の主流化に向けた大きなステップとなることへの期待等が示された。
続いて、十倉雅和経団連副会長(現・審議員会副議長)、髙島誠全国銀行協会会長らが、それぞれ産業界・金融界を代表してあいさつを行った。十倉副会長の発言概要は次のとおり。
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ESG投資が世界中で拡大するなか、TCFD提言は、さまざまな気候変動対策に積極的に取り組む企業が、世界の投資資金を集めていくうえで、重要なツールとなる。そこで今般、経団連も支援機関として提言への賛同を表明した。TCFD提言は、気候変動に関する事業リスクだけではなく、課題解決に向けたイノベーションへの挑戦といったオポチュニティーの開示も促している。わが国企業は、気候変動対策における世界最高水準の製品・技術・ソリューションを数多く有している。日本でG20サミットが開催されるこの機会に、こうした日本企業の強みを世界に発信し、イノベーションへの挑戦を資金面から後押しすることが重要である。TCFDコンソーシアムでは、事業会社の効果的な情報開示と、金融機関の適切な投資判断につながる取り組みについて、活発な議論が行われることを祈念している。
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今後、TCFDコンソーシアムでは、事業会社向けの「TCFDガイダンス」の改訂や、金融機関・投資家向けの「グリーン投資ガイダンス」の策定等に向け、企業の実務家クラスを中心に議論を深めていく予定である。
【環境エネルギー本部】