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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年6月20日 No.3412 ロシア・NIS諸国の最新情勢等について聞く -日本ロシア経済委員会

講演するザスラフスキー氏

今年3月に欧米諸国が追加制裁を発動するなど、2014年3月のロシアによるクリミア併合を受けた対露制裁の緩和・解除の見通しは一向に立っていない。また、ウクライナやカザフスタンで政権交代がみられるなか、ロシア・NIS諸国の動向を注視していくことが肝要である。そこで経団連の日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は6月3日、東京・大手町の経団連会館で、米コンサルティング会社ホライズンのアレクサンダー・ザスラフスキー・シニアパートナーからロシア・NIS諸国の最新情勢や今後の展望等について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ ロシア

欧米諸国による対露制裁の行方を展望することは困難である。米国では上下両院で対露制裁を強化する法案も審議されており、不確実性は依然として高い。こうしたなか、ロシアでの事業展開にあたっては、ビジネスパートナーに対する制裁リスクを勘案する必要がある。

昨年4選されたウラジーミル・プーチン大統領の任期はまだ5年残されているが、オリガルヒ(新興財閥)など、大統領周辺の人々の行動に変化がみられる。例えば、天然ガスの世界最大手ガスプロムでは、プーチン大統領が就任した00年以降大きな変化のなかった経営陣が相次いで辞任した。大統領と親しいオリガルヒがガスプロムへ建設会社を売却するなど、プーチン大統領の退任前に利益の確定をねらう動きが散見される。ロシアの政治・経済のカギを握る有力者の動向を今後とも注視することが必要である。

■ ウクライナ

5月20日、コメディアン出身のウォロディミル・ゼレンスキー氏が現職のペトロ・ポロシェンコ氏を破り、大統領に就任した。4月21日の決選投票で72%超の得票率を獲得し、地滑り的勝利を収めたものの、具体的な政策を欠くゼレンスキー氏の政策運営は未知数である。ロシアとEUに挟まれる地政学的な問題に対処しつつ、国内のオリガルヒによる圧力や、巨額の対外債務にいかに向き合っていくかが焦点となる。

■ カザフスタン・ウズベキスタン

1991年の独立以来、約30年間カザフスタンの大統領を務めてきたヌルスルタン・ナザルバエフ氏が今年3月に辞任したことを受け、カシムジョマルト・トカエフ上院議長が暫定大統領に就任した。6月9日の大統領選挙ではトカエフ氏の勝利が既定路線である(注)。一連の流れはナザルバエフ氏からトカエフ氏への権力移譲にみえるが、今後もナザルバエフ氏は実質的に権力を掌握し続けるものと考えられる。

一方、隣国のウズベキスタンでは2016年のシャフカット・ミルジヨーエフ大統領の就任以降、外国為替や許認可手続きにかかる規制緩和など、一連の経済改革が一定の成果を上げている。その一方で、改革の手法は依然として大統領の恣意性に基づく中央集権的なものであり、混乱もみられる。乱立する省庁の間の力関係や役割を見極めることが肝要であろう。

(注)6月9日の大統領選挙の結果、トカエフ氏が約70%の得票率で大統領に当選した

【国際経済本部】

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