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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月1日 No.3418 夏季フォーラム2019 -第2セッション「“Society 5.0”時代の人材育成」

新井氏

夏季フォーラム第2セッション前半では、国立情報学研究所社会共有知研究センター長、教育のための科学研究所代表理事・所長の新井紀子氏から「“Society 5.0”時代の人材育成」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。講演のポイントは次のとおり。

■ AIリテラシーの向上に向けて

Society 5.0時代においては、人間の労働の必要性が大幅に減る可能性がある。AIには言葉の意味がわからないという限界があるため、すべての労働が不要となるわけではないが、数多くの労働者を企業が抱え続けられる保証はない。多くの労働者が不要となり得るという認識を産学官で共有し、どう社会をソフトランディングさせるかを考える必要がある。

私は、いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を起点にAIブームが訪れることを予見していた。AIブームが訪れたときにAIの本質がわかっていなければ、日本企業は対処することができない。こうした危機感から、昨今のAIブームを誰も予見していなかった2011年に、「ロボットは東大に入れるか」(東ロボ)というプロジェクトを開始した。

■ 読解力の重要性

「東ロボ」はグーグル等のAI同様に、言葉の意味を理解できない。しかし、大学受験における東ロボの成績は年々向上しており、ついに高校生の上位20%にまで達してしまった。言葉の意味がわかるはずの高校生が、なぜわからないAIに負けてしまうのか。問題は高校生の読解力にある。文章の意味が理解できるかテストすべく、言葉の係り受けや複数の文章の論理的同義性を特定する問題を高校生に解かせると、正答率が驚くほど低い。これは由々しき事態である。読解力が低いことで教科書が読めなければ、自分で勉強することさえできない。

AIブームのさなかにあって、教育の議論はプログラミング教育や英語教育に関するものに偏りがちである。しかしながら、総合的学力のカギとなる読解力を養わなければ、AIに職を奪われる層が増加してしまう。中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることが、公教育の最重要課題である。企業にとっては、それが高校の教科書を読めない従業員を雇用しなくてすむことにつながり、組織として最大のリスクヘッジになるのではないか。

◇◇◇

その後の意見交換では、地方創生に向けた人材育成や教育改革のあり方等について、活発な議論がなされた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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