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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月19日 No.3423 「Society 5.0の考え方に基づく次世代スマートシティの構築」に向けて意見交換 -都市・住宅政策委員会

経団連は9月3日、都内で都市・住宅政策委員会(菰田正信委員長、根岸修史委員長、常陰均委員長)を開催。東京大学大学院新領域創成科学研究科の出口敦教授から、Society 5.0の考え方に基づく次世代スマートシティの構築について説明を聞くとともに懇談した。概要は次のとおり。

日本では、2010年代初めにスマートシティの取り組みが本格化したが、当初は、新規の都市開発とセットでスマートグリッドなどのインフラを導入するエネルギーマネジメント型スマートシティが中心であった。

一方、同時期にスペインのバルセロナ、サンタンデールなど欧州の都市では、いろいろなセンサーを街なかに設置し、自治体施策や民間サービスに活用するセンシング型スマートシティが広まっていた。中国でも直近3年ほどで、杭州、雄安新区などでデータ駆動型スマートシティの構築が進められている。

日本でも16年の「第5期科学技術基本計画」で「Society 5.0」が打ち出され、欧州のようなセンシング型スマートシティの実現に向けた取り組みが始まった。17年には総務省のデータ活用型スマートシティ推進事業が、今年は国土交通省のスマートシティモデル事業が始まっている。

Society 5.0のポイントは3つある。1つ目は「人間中心の社会」ということである。これは、都市に関していえば、経済効率性の追求にとどまらず、ストックを活かした全体最適化、都市ごとの自律的な居住環境、冗長性に富んだネットワークが実現した「自律分散都市」を構築し、多様な生活スタイルの実現によってQOL(Quality of Life、生活の質)の向上を目指すものである。

2つ目は「経済発展と社会課題解決の両立」である。例えば、環境負荷(CO2)の低減という課題を解決しようとするとき、国や自治体の政策を通じた構造転換や技術開発によるイノベーションによって、CO2排出を抑制しながらQOLの向上を図ることができる。

3つ目は「サイバー空間とフィジカル空間の融合」である。都市においては従来、データに基づいたマスタープラン作成等を通じて都市計画を推進してきたが、これは5~10年という中・長周期での取り組みであった。これに対して、近年、リアルタイムデータを活用して利用者の行動を誘導するデータ駆動型システムが試みられている。その際、さまざまな分野のデータが集積されるサイバー空間(データプラットフォーム、都市OS)が重要な役割を果たす。

このようなSociety 5.0の考え方に基づくデータ駆動型スマートシティを実現するうえで、データ駆動型社会が地域社会に許容・受容される条件の解明、地域のデータ銀行とデータ連携基盤の構築、事業者間・異分野間のデータ連携の促進、ビジネス・エコシステムの醸成、公・民・学連携の組織と仕組みの構築などが課題である。

◇◇◇

懇談では、委員から、スマートシティ実現に向けて求められる教育・人材育成について質問があった。これに対し出口氏は、新たなシステム・仕組みの社会受容について研究する人材の育成、プランナーと技術エンジニアのコーディネートを担うスマートシティ専門家の育成、一般市民へのデータリテラシー教育の3つが重要と指摘した。

【産業政策本部】

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