経団連の中西宏明会長は9月27日、東京・大手町の経団連会館で記者会見を行った。
中西会長は、台風15号の犠牲者ならびに被災者への哀悼とお見舞いの意を表したうえで、自然災害は日常化しており、気候変動の影響によるものと受け止める必要があると指摘。今後も同規模の災害が発生するおそれがあるとして、経済界としても対応を強化していくとの意向を示した。
災害とエネルギーの問題は、再生可能エネルギーの活用や脱炭素化の流れとも関連しているとしたうえで、2030年、50年をターゲットに可能な範囲で気候変動対策を講じていくことで間に合うのか、平均気温はすでに1.5℃くらい上昇している感覚であり、台風の勢力も強くなっているとしたうえで、エネルギー投資が停滞するなか、先見性を持って設備投資や技術開発ができる仕掛けづくりの必要性があらためて広く認識されたと指摘。今後も政府と連携して取り組みを強力に進めていくとの考えを示した。
また、ゼロエミッションの達成時期を宣言する欧米企業が増え始めており、日本でも、経済産業省が気候変動対策のイノベーションに取り組む企業を増やす活動を推進していることに言及。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)においても、国際社会における問題解決への取り組みのステージは一段階上がっているとの見方を示した。
社会保障制度改革については、若者の将来不安を解消し、経済成長につながる制度設計をする必要があると強調。日本経済が比較的安定している時に制度改革を進めることが重要との認識を示した。持続可能な社会保障制度の実現には給付と負担の見直しは不可避であり、解決策を見いだしていくことは容易ではないが、全世代型社会保障検討会議では幅広く議論、日本社会全体を俯瞰し整合性の取れた提言を取りまとめたいと述べた。
消費税率の引き上げの影響については、今の時点で見通すことは難しいとしたうえで、前回の引き上げから相応の年数が経過し、2%という引き上げ幅、政府が講じる諸対策を踏まえれば、前回のような混乱は生じないのではないかと指摘。想定以上の悪影響が生じた際は政府が迅速に対策を講じるとしており、経済界もその対応を見ながら協力していくと述べた。
また、社会保障制度の維持には痛みを伴う改革は避けられないが、負担を先送りし、若い世代、将来世代にしわ寄せをすべきではないことは国民のコンセンサスだろうと指摘。日本経済再生という課題に取り組む一方で、国民に公平に負担を求めるということで、消費税の引き上げは財源確保に向けた手段の選択肢の一つであると述べた。
日韓関係をめぐっては、今回の日本の輸出貿易管理措置を規制強化ではなく、審査を経て問題ないと確認された案件の輸出はなされていると説明したうえで、両国がウィンウィンとなれる、これからのあるべき姿を経済界同士が冷静に議論を積み上げ、模索していくことが重要との認識を示した。
【広報本部】