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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月24日 No.3428 東京大学大学院の越塚教授からデータ駆動型社会の実現に向けた課題聞く -デジタルエコノミー推進委員会

経団連は10月1日、東京・大手町の経団連会館でデジタルエコノミー推進委員会(篠原弘道委員長、井阪隆一委員長)を開催し、東京大学大学院の越塚登教授から、データ駆動型社会の実現に向けた課題について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ データ流通・活用の現状

(1)オープンデータ・データ連携基盤の構築

わが国では、データ流通・活用に向けて、省庁ごとにさまざまな施策が講じられている。オープンデータについては、政府が公共データのオープン化を進め、公共データを掲載するデータカタログサイトでは現在約2万2000点のデータセットを提供しているが、地方公共団体の取り組みは道半ばである。パーソナルデータの流通に向けては、PDS(Personal Data Store)の機能を持った情報銀行など11の取り組みが始まったところである。産業データの活用については、製造業のデータ連携(IVI=Industrial Valuechain Initiative等)や、農林水産業のデータ連携(データ駆動型農業)、食品産業のデータ連携(食品トレーサビリティー)等が進められている。

(2)データ活用事例

データ活用の新たな試みとして、スマートメーターから取得されるデータを用いて、各家庭の将来の在不在をAIの機械学習で予測することで、不在先への配達を回避できる仕組みを検討している。再配達の回避による効率化とともに、在宅先を回るルートだけを配達者に提示することで不在は特定されず、データ活用とプライバシー保護を両立させる取り組みと考えている。

■ データ駆動型社会に向けて

上記のとおり、わが国のデータ流通・活用の取り組みは徐々に進んでいるが、データ駆動型社会の実現に向けては、下記のような重要な課題がある。

(1)日本のDX推進

日本全体のDX(注)を推進するためには、地域課題をIoTやAIを活用して解決することが重要である。しかしながら、その前提として、地域課題解決に必要なビジネスモデルが提供されていないという問題がある。大手ITベンダーが手がける大型のビジネスと安価なITツールの間を埋めることができる、数百万円規模で地域課題を解決できるITソリューションを提供するビジネスモデルを確立することが肝要である。

(2)データ流通連携基盤の構築

分野ごとのデータ連携基盤の策定は進んでいるが、それが全体としてつながっておらずサイロ化していることが大きな課題である。国営のデータセンターは非現実的であり、データ提供者とデータ利用者、分野ごとのデータ基盤を分散型で緩やかにつなげるデータ流通連携基盤が必要である。そのための仕組みづくりを第2期SIP「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」において取り組んでいるところである。

データ流通・活用の最終的なゴールはスマートシティーである。しかし、グローバルな競争にさらされている都市OSやスマートシティーのアーキテクチャーづくりにおいて、わが国は出遅れており、スマートシティーをめぐるルールづくりは今後の重要な課題である。

データ活用で先を走る米国・中国のモデルは特殊であり、わが国がバランスの取れたデータ流通・活用のあり方を示し、世界のモデルになることは可能であろう。

◇◇◇

講演の後、提言「Society 5.0の実現に向けた個人データ保護と活用のあり方(案)」と個人データ適正利用経営宣言(案)の審議が行われ、承認された。

(注)DX=Digital Transformation、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させること

【産業技術本部】

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