1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2020年1月1日 No.3437
  5. 農業の競争力強化に向けた課題と解決策について聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月1日 No.3437 農業の競争力強化に向けた課題と解決策について聞く -農業活性化委員会企画部会

経団連は12月10日、東京・大手町の経団連会館で農業活性化委員会企画部会(井伊基之部会長)を開催し、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹から、わが国食料・農業が抱える課題とその解決に向けた施策等について聞くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

◇◇◇

農業所得や食料自給率の向上等が農政の目的として掲げられてきたが、農家の高齢化、後継者の減少、耕作放棄地の増加など、根本的な問題は手付かずのままである。なかでも、稲作に代表されるように、小規模・零細、低収益性は日本の農業最大の問題である。

この要因は、農業の実態を踏まえずに展開されてきた戦後農政にある。例えば、農地法は、農地の耕作者と所有者を固定しようとしたもので、後に株式会社やベンチャー企業の参入を阻む壁となり後継者の確保も困難にしている。農政を国際比較しても、米国やEU諸国では農家への直接支払いが中心であるのに対し、わが国は価格維持により消費者に負担を課す政策が取られている。このなかで、米の減反は多大の財政負担で米価を上げて消費者負担を高めるという他に例を見ない政策である。減反で生産性が停滞、さらに高米価が維持されたことで米の消費量の減少につながった。

こうした政策と、今後国内市場の高齢化と人口減少による縮小とが相まって農業・農村が衰退するなか、競争力の強化、生産性の向上は必須である。特に、農業は生物や自然を相手にしており、価格等の市場情報、気象、土壌、病害虫の発生等の生産関連情報をもとに適切な生産農産物や生産方法を判断する必要があることを踏まえると、AIやICTの活用が有効であろう。

このAIやICT活用のカギとなるのが、ビッグデータの収集、分析、提供である。「農業データ連携基盤(WAGRI)」は、この考え方を具現化したものに近いが、個々の農家を束ねるIT企業同士が市場で寡占的に競争している状態ではうまくいかない。これを突破する方策として、農業ビッグデータを集約管理する公的組織を設置する一方、集められた情報を分析・提供する機関として、民間による「農業IT協同組合」を設置してはどうかと考えている。その組合が作物の生育状況等のパーソナルデータを匿名化してビッグデータに提供し、ビッグデータと個々のパーソナルデータを組み合わせて最適な情報を農家に提供することで、より高い効果が発揮されよう。

◇◇◇

続く懇談では、出席者から農業の活性化に向けた経団連の役割について質問があり、山下氏は「政治に頼らない農家の自助を基本としたうえで、農業の入口となる経営計画や出口の販路について支援する働きをしてほしい」と答えた。

【産業政策本部】

「2020年1月1日 No.3437」一覧はこちら