1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2020年1月23日 No.3439
  5. 2020年版経労委報告を公表

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月23日 No.3439 2020年版経労委報告を公表 -Society 5.0時代を切り拓くエンゲージメントと価値創造力の向上

記者会見する大橋副会長・経営労働政策特別委員長

経団連(中西宏明会長)は1月21日、春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスや、雇用・労働分野における経団連の基本的な考え方を示す「2020年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を公表した。同日記者会見を行った同委員会委員長の大橋徹二副会長は、2020年版報告の副題を「Society 5.0時代を切り拓くエンゲージメントと価値創造力の向上」とした思いについて、「Society 5.0時代に向けて、働き手が組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を表す概念である『エンゲージメント』に着目し、それを高め、価値創造力を向上させることの重要性を強調した」と語った。2020年版報告の主なポイントは次のとおり。

■ 第1章 Society 5.0時代にふさわしい働き方を目指して

働き方改革について、インプットの効率化を中心とした「フェーズⅠ」から、アウトプットの最大化に注力する「フェーズⅡ」へ深化させる重要性を強調。そのカギを握るのが働き手の「エンゲージメント」であるとし、ダイバーシティ経営の推進などエンゲージメントの向上策を示した。

新卒一括採用や長期・終身雇用、年功型賃金などを特徴とする日本型雇用システムは、さまざまなメリットがある一方で、経営環境の変化などに伴い課題が顕在化していると指摘。自社の経営戦略の実行にとって最適な「自社型」雇用システムの確立を求めた。

人材育成では、働き手の多様性や主体性を尊重した自律的なキャリア形成の支援がエンゲージメントの向上につながるとしたうえで、デジタル革新を担う人材の能力開発の必要性に言及した。

地方創生の担い手としての大きな役割が期待されている地域の中小企業については、サプライチェーン全体を含めたさまざまな主体との連携による、新たな価値創造に向けた取り組みの重要性を示している。

■ 第2章 雇用・労働分野における諸課題

働き方改革関連法やハラスメントをめぐる法改正への対応、70歳までの就業機会の確保に向けた取り組み、障害者雇用の現状と課題、最低賃金制度に関する考え方などを整理した。

■ 第3章 2020年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

労使交渉の前提となるわが国企業を取り巻く経営環境について、世界経済が減速するなか、業種や企業ごとに業績のばらつきがみられ、先行きの不透明感が強いとの認識を示した。

また、地域経済を担う中小企業における人手不足と後継者不足の深刻化や、最低賃金引き上げ等による影響に言及した。

○ 連合「2020春季生活闘争方針」への見解

「底上げ」「底支え」「格差是正」それぞれで賃金要求指標を掲げるなど要求目的が多岐にわたり、わかりにくい面もあると指摘。このうち、「底支え」の要求指標として挙げている企業内最低賃金協定の締結については個別企業の判断に委ねるべきとの考えを示した。

○ 経営側の基本スタンス

各企業は、収益拡大を社員へ還元する「賃金引き上げ」と、職場環境や能力開発に資する「総合的な処遇改善」を車の両輪とし、多様な選択肢のなかから、自社に適した方法と施策を検討・実施していくことが重要との基本的考え方を明記した。

賃金引き上げについては、「賃金決定の大原則」に則ったうえで、モメンタム維持に向けて、各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことを基本とした。具体的には、(1)基本給(2)諸手当(3)賞与・一時金――を柱に据えて、多種多様な方法による組み合わせを含めて議論するよう呼びかけている。

総合的な処遇改善については、エンゲージメント向上を通じてイノベーション創出力を高め、Society 5.0の実現につながる重要な施策であるとし、企業労使で幅広い観点から対話を重ね、深化させていくよう働きかけている。

○ 今後の労使関係

推定組織率の低下や働き手の意識の変化などを踏まえ、労働組合との集団的労使関係に加えて、社員との個別労使関係を深めていくことが重要となっていると指摘。企業労使に、「共感と信頼」により、さまざまなチャネル・施策を通じて、良好で安定的な関係を多層的に深化させていく努力を求めている。

【労働政策本部】

「2020年1月23日 No.3439」一覧はこちら