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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月20日 No.3443 ドイツのインダストリー4.0の現状について聞く -サプライチェーン委員会企画部会

経団連のサプライチェーン委員会企画部会(藪重洋部会長)は1月29日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本貿易振興機構(JETRO)の立川雅和海外調査部主査から、「ドイツのインダストリー4.0の現状」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ インダストリー4.0の経緯

2015年4月に公表された「インダストリー4.0実現戦略」において、インダストリー4.0は「製品のライフサイクルを通じて、価値創造に関するすべてのインスタンスをネットワークでつなぎ、関連データをリアルタイムで常に利用可能とする」ものと定義されている。この取り組みは、高い人件費やエネルギーコストといった構造上の問題を抱えるドイツにとって、効率的な生産や経済活動による資源の利用効率向上、労働時間の短縮等が期待されるものである。また、連邦政府がプラットフォームを整備し、主体となって各州の企業や業界団体を巻き込みながら強力に推進している点も特徴的である。日本を含む各国とも提携・協力関係を構築しながら進めている。

■ インダストリー4.0の実施状況

インダストリー4.0の実施状況に関する業界団体のアンケートによれば、インダストリー4.0に関するソリューションを導入している企業は過半数を占めていることなどから、取り組み初期に比べると徐々に考え方が浸透し、技術の実装や関連投資が増加してきたといえる。一方、自社工場内の機械を半分以上インターネットに接続している企業は1割程度となっており、完全な実装にはほど遠い。別の側面では、機械化や自動化により余剰人員が発生し、雇用が減るとの懸念もあることから、労働界の声も取り入れながら進めている。

■ インダストリー4.0の課題

インダストリー4.0の課題として、旧来型のITシステムの刷新やそれらにかかるコスト負担、データサイエンティスト等の熟練人材確保に加え、データ保護やセキュリティー要求への対応などが多く挙げられている。政府には人材支援や実行可能なデータ保護、通信インフラの拡大といった施策の実行が求められている。

■ 中小企業での導入支援

インダストリー4.0の重要な支援先の一つとして中堅・中小企業が挙げられる。プラットフォーム・インダストリー4.0では活動事例や支援機関の紹介を行うほか、連邦経済・エネルギー省では全独26カ所に整備した「Mittelstand 4.0 Competence Center(ミッテルシュタント4.0技能センター)」において、インダストリー4.0推進のための情報提供や研究機関と連携した技術開発、中小企業への出張コンサルティング等の支援に注力している。中小企業の取り組みは受注生産プロセスの見える化や紙による業務のデジタル化といったものが中心で、大企業に比べると一歩手前の段階であるが、国や公的機関の強力なバックアップも得ながら、必要なところから進めている状況である。

【産業政策本部】

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