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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年2月27日 No.3444 「誰一人取り残されない」ソーシャル・インクルージョンの取り組みを聞く -経団連1%クラブ

経団連の企業行動・SDGs委員会経団連1%クラブ(山ノ川実夏座長、岩﨑三枝子座長)は2月5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。社会的困難を抱える人々のソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)に向けた活動を行う団体の関係者から、取り組みの紹介を受けるとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

(1)ひとり親(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長・赤石千衣子氏)

しんぐるまざあず・ふぉーらむの事業

当団体は「シングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会の実現」を目指し活動している。

厚生労働省の調査によると母子世帯の就業率は81.8%と諸外国に比べ高いが、非正規雇用で働く割合が高く、低収入で貧困に陥りやすい。子育てに時間をとられる時期の働き方としてパート等を選ぶと、子どもが大きくなった時に教育費の負担が増えて苦労しがちだ。子どもに手がかからなくなったからとフルタイム職に応募しても、採用されるのは容易でない。

そこで、企業の協力を得てフルタイム正社員登用を見据えた就労支援を行っている。ビジネス技能だけでなく、自己尊重意識を培う機会を設けているのが特徴である。受講者にはもともと能力があって働く意欲の高い人が多く、前向き志向になると見違えるように成長する。彼女たちを活用できれば、企業にとってもメリットとなるだろう。

(2)日本在住難民(WELgee代表理事・渡部カンコロンゴ清花氏)

WELgee/JobCopassプログラム

難民として日本に逃れた人々のなかには、語学力や専門技能を持ち、ゼロから物事を生み出せるユニークな人がいる。彼らの才能を活かし、共に未来を築きたい。

当団体は、日本在住の難民の若者と企業とをマッチングし雇用につなげる「JobCopassプログラム」を実施している。その際、難民申請者が有する「特定活動資格」に比べ、より安定して働ける在留資格への切り替えサポート、勤務先に業務上の資料を英語化する配慮要請など、伴走支援も行っている。

彼らは、イノベーションを創出するダイバーシティ人材になり得るし、多くがアフリカや中東出身者なので、企業が将来事業進出した際には懸け橋となるだろう。このような魅力ある人々がすでに国内にいることをぜひ知ってほしい。

(3)保護観察対象者(法務省保護局更生保護振興課補佐官・前川洋平氏)

法務省「立ち直りを支える“更生保護”」

犯罪や非行をした人が社会に戻ってきたときに居場所や仕事、相談相手がいないと、立ち直りがうまくいかず再び罪を犯しかねない。彼らの更生を支援する仕組みの中核が保護観察制度である。

保護観察制度は、法務省職員である保護観察官とともに民間ボランティアの「保護司」が担っている。保護司は対象者と面接し、生活状況の報告を受けたり、相談に乗ったり、国から定められた約束事を守るよう指導したりする。保護司からは対象者の更生に携わり充実感を得た、地域で人の輪が広がった等の好意的な声が届いているが、近年は担い手の確保に苦労している。

就労し安定収入を得ることは社会復帰の第一歩だ。前歴を承知のうえで積極的に雇用してくれる事業者等の協力も得ながら就労支援を行っているが、保護観察対象者は組織内で人間関係を築くのが苦手な人が多い。より多くの企業経験者が保護司となって就労上のアドバイスをしてもらえると、彼らの助けになるだろう。

【SDGs本部】

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