経団連は5月11日、提言「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく」を公表した。同提言は、経団連が昨年設置したデジタルトランスフォーメーション(DX)会議(中西宏明議長)およびDXタスクフォース(浦川伸一座長)での議論をもとに策定したもの。新型コロナウイルス感染症への対策、終息後の回復を経た創造的な新たな社会(Society 5.0)実現に向けて、DXを通じた産業全体や企業の構造変革の必要性を訴えている。
■ DXとは何か
デジタルやデータによる変化は、テクノロジーの変化だけでなく、社会基盤や文化そのものの変革をもたらす。提言では、DXを「デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わること。また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図ること」と定義した。
■ 産業構造DX
これまでの産業は業種・製品起点で区分されてきたが、今後、その産業の垣根は大きく崩れ、生活者の体験価値・解決される課題別の産業へと置き換わる。各国においてさまざまなかたちでDXが進むなかで、わが国としては、多様な主体の協創によって生活者の価値を実現することを特徴とする「日本発DX」を推し進めていくことが重要である。
■ 企業DX
産業構造の転換を図るためには、各企業がその本質を理解しビジョンを定め、「協創」「経営」「人材」「組織」「技術」の要素ごとに自社の現状を把握したうえで実際の変革を進める体制を整えること(DX-Ready化)が必要である。
とりわけカギとなるのは「協創」である。これまでの単なる企業提携や業務提携を越えて、多様な主体間で多様な手段を組み合わせて、強みを融合し弱みを補い合うことで収益を生む新たなビジネスモデルやエコシステムを構築する観点が欠かせない。
■ 産学官協創による国際展開
日本発DXを国際展開し、世界中のパートナーとともに価値を創造するためには、グローバルなルール形成を行うことが不可欠である。国境を越えて安心してデータを活用できる、グローバルに調和のとれた安定したルールの形成や、規制のあり方そのものを根本から見直すガバナンス・イノベーションを、わが国が主導することが重要である。
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DX推進に向けて最も重要なのは、実装に向けた具体的な取り組みの推進である。経団連は、多くの業種業態の企業を会員とする特徴を活かし、生活者の価値実現に向けた企業横断の実プロジェクトを推進していく予定。さまざまなステークホルダーとの協創によりDXを進めていく。
【産業技術本部】