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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年8月27日 No.3465 警察改革法案にみる連邦議会の機能不全 -ワシントン・リポート<77>

米国において、連邦議会はもはや重要な政策課題解決に向けた法案を制定する能力も意志も欠如しており、立法機関として機能していないとの声が上がっている。6月に共和党による警察改革法案が上院において否決されたのはその顕著な例といえる。

5月にジョージ・フロイド氏が殺害された事件を受けて、全米で警察の暴力と人種差別に対する抗議運動が広まった。新型コロナウイルスが猛威を振るうさなかでも、米国社会全般における高い注目度を受けて、連邦議会は迅速に対応し、当初は超党派による成果への期待があった。

民主党多数の下院では、黒人議員連盟主導で警察改革法案が提出され、6月25日に民主党全議員と共和党議員3名の賛成でこの民主党案が下院を通過した。一方、共和党多数の上院では、改革法案の取りまとめに共和党唯一の黒人上院議員であるティム・スコット議員(サウスカロライナ州)が抜擢され、法案は同月24日に上院本会議審議開始の議決にかけられた。しかし、結果は審議開始に必要な60票に届かず、共和党全議員と民主党側3議員の55票どまりで否決された。

上院共和党法案と下院民主党法案の内容は異なっているが、警察官による行き過ぎた取り締まりを防ぐという方向性は共通しており、それは度合いと手法の違いといえる。スコット上院議員は2つの法案の90%は類似していると指摘し、黒人議員連盟議長のカレン・バス下院議員(民主党・カリフォルニア州)も主要な項目は共通していると述べた。

否決後にスコット議員は、上院が警察改革のような重要法案の審議開始すらできないことを嘆き、民主党は法案の内容と関係なく、共和党としての成果を絶対に防ぐために共和党案というだけで反対したのだと批判した。合意できている部分だけでも前進させることはせず、11月の選挙後に100%民主党主導でできることを期待して、すべて塩漬けにすることを選んだと糾弾した。通常、上下院がそれぞれの法案を可決し、その違いについては両院協議会において交渉されて解決を目指すことになるが、本件では上院は本会議の審議開始にすら至っていない。

本来、連邦議員は在任中の成果をもって再選を訴えるものであった。しかし、いまや政策課題を解決することよりも相手への攻撃材料としてその課題を温存することの方が有利だと考えるまでになっている。これは今回の民主党に限らず、共和党も過去に同じような行動に出ている。2013年に民主党多数の上院が包括的移民制度改革法案を可決したのに対し、共和党多数の下院は14年の中間選挙をにらんで結局取り上げなかった。

連邦議会は、両党間の妥協が不可能になっていると近年指摘されてきた。広く国民の注目を集めた今回の警察改革のような問題ですら、党派色や選挙対策の域を脱することができないでいる連邦議会は、実質機能不全に陥っているとの批判が高まっている。

【米国事務所】

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