1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2020年9月10日 No.3467
  5. COVID-19危機におけるレジリエントなグローバルサプライチェーンの構築について聴く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月10日 No.3467 COVID-19危機におけるレジリエントなグローバルサプライチェーンの構築について聴く -経団連 ILO連続オンラインセミナー

経団連の企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)は、6月23日、7月22日に国際労働機関(ILO)と「COVID-19危機におけるレジリエントなグローバルサプライチェーンの構築~国際労働基準からの示唆」をテーマに連続ウェビナーを共催した。ILO駐日代表の高﨑真一氏、ILOジュネーブ本部企業局の荒井由希子氏から、COVID-19がもたらした企業のサプライチェーンや労働への影響について説明を聴いた。そのうえで、第1回では、在欧日系ビジネス協議会CSR委員長の木下由香子氏から、ビジネスと人権における欧州の最新動向について、第2回では、国際使用者連盟(IOE)事務局次長のマティアス・ソーン氏とILOジュネーブ本部使用者関係局のアダム・グリーン氏から、国際機関におけるビジネスと人権をめぐる最新動向、持続可能でレジリエントなサプライチェーン構築に向けた留意点について説明を聴き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 欧州の最新動向

欧州委員会は、コロナ危機を経て、ますます長期的志向、フェア、サステナブル、レジリエンスの高い経済の構築を重要視している。新型コロナウイルスからの復興プランのなかには、環境および社会的利益がビジネス戦略に完全に組み込まれることを保証するため、2021年にサステナブルコーポレートガバナンスの新しいイニシアティブを提案することも含まれている。

また、欧州議会は、人権と環境を対象としたデューディリジェンス(DD)を義務化する意向を公表している。人権DDの欧州域内統一規制を求める声は、公平な競争条件を求める欧州企業からも挙がっているが、議会や市民社会、労働組合は、企業の情報開示の強化や企業が義務を果たせない場合の罰則、取締役の責任を含めた法的責任を求めているため、欧州の経済団体であるビジネスヨーロッパは慎重な検討を求めている。今後、コンサルテーションとインパクト評価を経て、21年に法案が発表される予定である。このDDは、欧州企業だけでなく、欧州で活動するすべての企業が対象となるため、企業としては、EUのルールがグローバルルール化することを想定して、ビジネスと人権原則に沿った方針を策定するだけでなく、DDの実行性も高める必要がある。そのためには、社内体制を整え、マルチステークホルダーをはじめとする社外との連携強化を図ることが重要である。

また、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)は、21年に策定10周年を迎える。国連ビジネスと人権に関するワーキング・グループでは、この1年間で、指導原則の次の10年間のロードマップを策定することとしている。その他、国連人権委員会における法的拘束力を持つ国際人権条約策定への動きや、ISOにおける社会的責任に関する新たな作業部会設置など、企業の社会的責任を求める国際的な議論が活発化している。こうした動きに対して、日本は、自国の意見が反映されるよう働きかけていくことが重要である。

■ 持続可能でレジリエントなサプライチェーン構築のための留意点

グローバルサプライチェーンにおいて企業は、短期的な混乱を抑えながら、中期的に回復を模索し、長期的には確実にサプライチェーンの回復と最適化を図らなくてはならないという課題に直面している。グローバルと国内のサプライヤーのバランス、コストと効率のバランス、回復力と持続可能性のバランスをそれぞれ適切に保つ必要がある。

また、顧客行動が変わり、サービスに対する需要が大きく変わるため、デジタルを活用した新しいビジネスモデルが必要である。サプライチェーンにおいても、テクノロジーの影響度が増し、デジタル化することでスピード感を高める必要があるだろう。

サプライチェーンに大きな影響を及ぼす中小企業の経営破綻にも注視が必要である。レジリエントなグローバルサプライチェーンを構築するためには、企業はサプライチェーンのすべての階層において、信頼できるサプライヤーと関わることが重要で、ビジネスの継続性を高め、調達のオプションを増やさなくてはならない。

【SDGs本部】

「2020年9月10日 No.3467」一覧はこちら