Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月15日 No.3471  炭素を資源として活用する「新・炭素社会」構築に向けて -〈連載〉わが社のチャレンジ・ゼロ/三菱ケミカルホールディングス

Challenge Zero

2030年、地球の環境はどうなっているだろうか。2050年、社会はどのような姿だろうか。2100年、そしてさらにその先の世代へ持続可能な未来を引き継ぐために、私たちは今、何をしなければならないだろうか――。

三菱ケミカルホールディングスグループは、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」と定義した「KAITEKI」の実現をビジョンに掲げ、持続可能な未来へのソリューションプロバイダーとして企業活動を推進している。

気候変動、エネルギー・資源、サーキュラーエコノミーなど地球規模の課題に対する包括的ソリューションとして、当社は炭素、特にCO2を資源として活用する「新・炭素社会(Sustainable Carbon Society)」の構築を志向している。イノベーションを通じて、CO2をはじめとする炭素化合物循環のループをつなげ、自然本来のバランスを取り戻し、新たな循環をつくることが持続可能な未来へ導くカギであると考えている。今回は、3つの具体的ソリューションとインパクトの定量化に向けた取り組みを紹介する。

新・炭素社会構築の要素技術と考えている人工光合成は、光触媒によって太陽光エネルギーで水を直接分解、発生するCO2フリーの水素と酸素を安全に膜分離し、得られた水素とCO2を反応させてエチレンやプロピレンなどの化学原料を製造する夢のエコプロセスである。発電所や工場から排出されるCO2を活用すれば、ネットゼロ・エミッションに貢献できる。人工光合成は当社が長年取り組んできたテーマであり、現在はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のもと、日本の国家プロジェクトとしてARPChem(人工光合成化学プロセス技術研究組合)によって研究開発が進められている。

植物原料プラスチックの普及も、ソリューションの1つとして期待が大きい。再生産が可能な植物原料は、化石原料の消費を減らし、大気中のCO2を固定するのでCO2の増加を最小限に抑えることができる。「新・炭素社会」を支える素材として、当社は植物由来プラスチックおよび生分解性プラスチックの開発・普及を進めている。

エネルギーを効率的に利用する電化の促進も、社会全体のゼロ・エミッションにつながる。当社は、リチウムイオン電池部材、パワー半導体材料、放熱部材などのキー素材・モジュールの開発・普及に取り組んでいる。

私たちの経済活動は、環境や社会にポジティブ・ネガティブの両方でインパクトを与えている。その両面からバリューチェーン全体に目配りして行動していく必要があるが、環境や社会へのインパクトの定量化はいまだ難しい。当社は、ライフサイクル・アセスメント(LCA)の考え方を、環境影響だけでなく社会影響にも展開して企業価値算出を志向するイニシアティブ Value Balancing Allianceに日本企業として初めて参画し、価値創出の高度化に取り組んでいる。

ネットゼロ・カーボンの実現に向けて、当社グループの強みを活かしたチャレンジを多様なステークホルダーと共に続けていきたい。

連載「わが社のチャレンジ・ゼロ」はこちら