経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は9月30日、経済協力開発機構(OECD)の公的諮問機関BIAC(Business at OECD)のパリ本部等とのオンライン会議を開催し、ハンス=ヨーン・ウェディガBIAC環境・エネルギー委員長、ハンニ・ローゼンバウム事務局長代理はじめBIAC幹部との意見交換を行った。
近年の異常気象の世界的な増加等を背景に、気候変動問題への対応がますます喫緊の課題となるなかで、OECDは "Green recovery in the age of COVID-19" と称して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応と同時に、環境に配慮した包摂的な経済回復を提唱している。
概要は次のとおり。
■ ハンニ・ローゼンバウムBIAC事務局長代理
OECDは、環境分野に関する取り組みの進捗とベストプラクティスを共有する唯一のフォーラムであるとともに、経済への影響の分析など、他分野も合わせた包括的・分野横断的な政策の検討を行っている。
活動の中心であるOECD環境政策委員会では、(1)環境の保全・回復と経済効率性の促進(2)経済、社会、セクター政策との統合的な環境政策の推進(3)環境分野の取り組みに関する傾向や進捗の分析(4)OECD加盟国やパートナー国との協力の推進――を主な目標として掲げている。委員会や作業部会での検討は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の議論にも貢献している。
BIACでは、環境・エネルギー委員会を中心に、OECDの議論に積極的に関与している。
■ ハンス=ヨーン・ウェディガBIAC環境・エネルギー委員長
OECDは経済界の意見を聴くことに熱心である。9月中旬に行われた環境分野の閣僚級ラウンドテーブルでも、BIACとして発言の機会を得た。このようなハイレベルな会合で発信した経済界の意見は、後々の成果物にも数多く引用されてきた。
COVID-19を受けて、気候変動が優先度の高い問題であるとの認識が多くの国であらためて共有された。経済回復か環境かの二者択一ではなく、環境により配慮したかたちでいかに経済の回復を実現するかが課題である。他方、環境政策は差別的・保護主義的な政策を導入する口実などとして不適切に使用される可能性がある。OECDでエビデンスに基づいて細部まで丁寧に議論することが重要である。その際、各分野の相互作用を考慮しながら、分野横断的な検討を効果的に進めることを期待したい。
OECDは、G20をはじめ加盟国以外の国とも連携しており、国際的な意見形成の場として重要である。経済界として積極的に働きかけていくためにも、日本経済界との連携強化を望む。
このほか環境分野の主要な課題として、(1)環境と開発投資(2)国際的な気候変動交渉(3)環境と金融(4)環境と貿易(5)環境と税制――についてBIAC本部から説明があった。
経団連からは、手塚宏之環境安全委員会国際環境戦略ワーキング・グループ座長が、日本経済界の主体的な行動として「チャレンジ・ゼロ」を紹介した。
【国際経済本部】