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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月29日 No.3473 ウィズコロナ時代の人口問題について聴く -人口問題委員会企画部会

経団連は9月24日、人口問題委員会企画部会(手島恒明部会長)を開催し、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストから、ウィズコロナ時代の人口問題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 出生率1.8の実現に向けて

2014年、第二次安倍政権「新・三本の矢」の一つに「夢をつむぐ子育て支援」として、出生率1.8という目標が掲げられ、骨太方針においても「50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持」と明記された。これにより、種々の政策のなかで、人口問題の優先順位が上がったと認識している。世界におけるわが国のプレゼンスを守るためにも、1億人という人口目標を立てたことは重要である。一方で、直近の出生率は低下しており、目標の1.8を実現するためのハードルは相当高い。

■ 新型コロナ感染拡大の影響と人口政策の新たな展開

国内における人の移動をみると、1997年以降、地方から東京圏に人口が流入する東京一極集中傾向が続き、出生率にもマイナスの影響を与えていた。しかし、新型コロナ感染が拡大するなか、今年5月、7月には東京圏からの転出超過に転じる劇的な変化がみられる。テレワークが広まり、家族と過ごす時間が増えることで、人々の消費行動、投資行動、価値観等が変わりつつある。こうした変化に合わせて、ジョブ型雇用等、企業にかかわる制度を改革することで、一層、社会は変わっていく。今後の人口政策は単体でとらえず、地方創生等、他の政策と同じ方向を向いて取り組む必要がある。

■ リモートワークの現状と課題

リモートワークを活用することで、通勤時間が短くなり、出生にはプラスの影響がある。さらに、東京一極集中の是正や地方創生が進み、地方における正規雇用の増加をはじめ、保育や住環境を含めた自由で便利な生活環境が整えば、出生へのプラスの影響も想定される。

また、当研究所の調査によれば、感染恐怖が強い人ほどデジタル化を推進する傾向にあり、リモートワークを進めるタイミングはまさに今である。一方で、リモートワークの実施状況は業種や企業規模で異なり、緊急事態宣言が解除された後、実施率は下がっていることから、システム面での後押しが重要になる。

■ 地方における集積の必要性

現在、東京一極集中は是正の方向に向かっている。しかし、世界における過去の事例を踏まえると、一時的に一極集中が是正されても、集積した方が経済効率がよいために、何もしなければ、いずれは元に戻ると考えられる。地方において受け皿を整備するためには、教育、医療、雇用の確保等がポイントになる。そのためには、地域の核となる場所への集中と集積を進め、いくつかの維持可能な「地方」を持つ必要がある。

【経済政策本部】

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