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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月29日 No.3473 メキシコの現地情勢についてジェトロの稲葉メキシコ事務所長から聴く

経団連は10月5日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の稲葉公彦メキシコ事務所長による説明会をオンラインで開催し、メキシコにおける新型コロナウイルス感染症をめぐる状況や今年7月1日に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ コロナ感染者数は漸減傾向

10月3日現在、メキシコにおける新型コロナウイルスの累計感染者数は約75万人(世界第9位)であり、累計死亡者数は約7万9000人(世界第4位)と死亡者数が多い傾向にある。1日当たりの新規感染者数は8月1日に9556人のピークに達したが、直近2カ月間は減少傾向を示し、最近は4000人台まで下がっている。コロナ対応病床利用率もすべての州で落ち着きをみせており、医療崩壊の懸念は少ない。

■ 政府は有効な経済対策を打てず

メキシコ政府は、3月11日のWHOによるパンデミック宣言の後、同月末に非常事態を宣言し、「必要不可欠な社会・経済活動」以外の活動を停止した。自動車関連産業は、当初これに含まれなかったが、米国や自国の産業界からの強い要請を受けて5月に指定された。ジェトロが9月に実施した調査によれば、現在、特に製造業において多くの日系企業が操業を再開している。

しかし、ロペス・オブラドール現政権の経済対策は、社会的弱者重視で企業支援策に乏しく、財政出動も他国と比較して著しく少ない。その結果、2020年第2四半期のメキシコの実質GDP成長率は、前年同期比でマイナス18.92%まで悪化し、企業の倒産・廃業、失業者も急増している。輸出入は、6月以降、回復に向かっているものの、政府による需要創出が期待できず、メキシコ経済の先行きは不透明な状況にある。

■ USMCA発効後もサプライチェーンにおけるメキシコの重要性は不変

メキシコにとってUSMCAは、米国との高度な相互依存性に基づく北米市場の一体化の維持、対米自動車輸出基地としての自国の優位性の維持などの点で意義を持つ。USMCAにより、一部の製品で特恵関税を利用できる余地が狭まるなど影響が生じている。しかし、部品調達コストの削減効果が関税メリットの縮小を上回れば、企業にとってメキシコでの生産を継続することの大きな動機づけとなる。また、米国大統領選挙の結果次第では、厳格な原産地規則の見直しや米国の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への歩み寄りの可能性もある。日本企業としては、状況をにらみつつUSMCAの枠組みに臨機応変に対応していくことが肝要である。

◇◇◇

続く意見交換では、米中貿易摩擦を踏まえたメキシコの対応について質問があった。これに対して稲葉所長は、「マスク外交等で中国の動きはあるものの、メキシコはアジアのなかでは日本を重視している。また、メキシコの対外政策の基軸は、ビジネス戦略を含めなんといっても米国である」と指摘。米中摩擦によって、中国からメキシコに生産を移管して北米市場を目指す動きが、日本企業はもとより中国企業の間でも顕在化しつつあるとの認識を示した。

【国際協力本部】

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