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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月29日 No.3473 サウジアラビア現地情勢等についてジェトロの庄リヤド事務所長から聴く

経団連は10月7日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の庄秀輝リヤド事務所長とのオンライン会合を開催し、新型コロナウイルス感染症の現況や「社会・経済改革ビジョン2030」の進捗などについて説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 感染者数は減少、国内外の課題に積極的に対応

サウジアラビアの累計感染者数は33万人を超えたものの、整備された検査・医療体制や各種の規制により、6月以降は減少傾向が続いており、死者数も近隣国と比べると少ない。経済活動は5月末から段階的に緩和されており、9月中旬からは国際線の運航を再開、来年1月1日以降は全面的な国境開放を見込んでいる。

コロナ禍を一因とする世界的な石油需要の激減や経済活動の制限は、経済、財政、雇用に大きな打撃を与えている。政府は、企業への免税措置や融資とともに、生活補助金の廃止、付加価値税の引き上げなどを実行し、景気浮揚と緊縮財政に取り組んでいる。他方、食品や生活必需品の国内生産が拡大、ネットエンターテインメントやeコマースの隆盛などにより、社会のデジタル化やキャッシュレス化が急速に進展している。

今年11月のG20はオンライン開催となり、「社会・経済改革ビジョン2030」の成果を世界の首脳に披露する機会を失った。それでも、サウジアラビアは、パンデミックへの対処など重要課題解決に向けた国際協調を呼びかけ、ホスト国としてのリーダーシップを発揮している。

■ 「社会・経済改革ビジョン2030」の成果

2016年に発表された「社会・経済改革ビジョン2030」(ビジョン2030)は、野心的な目標ゆえにその実現を危ぶむ見方があったものの、この4年間で大きな進捗があった。娯楽の多様化や女性の社会進出促進などの政策は高く評価され、社会に活気があふれている。また、財政面では、国民の痛みを伴う措置を果敢に導入した。あわせて、経済面では、石油依存からの脱却、産業の多角化を目指すとともに、ビジネス環境の改善に取り組み、各種国際指標が示すように徐々に成果が表れている。改革を進めるムハンマド皇太子への国民の信頼は揺るぎない。ただし、新産業の育成については、製造業、鉱業、エネルギー、物流などの産業分野で海外からの大型投資が期待されるものの、道半ばである。

■ サウジアラビア・ビジネスの展望

中東地域では、イランやイスラエルの動向をはじめ、予断を許さない情勢が続く。そうしたなか、ビジョン2030を推進するサウジアラビアには、資源エネルギー分野以外にも、経済のサービス産業化に伴う多彩な商機が存在する。例えば、社会・インフラ整備では、電力や水など伝統的分野に加えて、水素社会を見据えたゼロ・カーボン発電用燃料、5G通信やスマートシティなども有望である。日本とサウジアラビアの良好な関係は確固たるものであり、経済社会のさらなる発展に向けて、日本企業への期待は大きい。進捗しつつある各種ギガプロジェクトを含め、巨大な潜在力を秘めるサウジアラビアに引き続き注目していく必要がある。

【国際協力本部】

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