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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月3日 No.3478 「過労死等防止対策セミナー」を開催

経団連は11月13日、「過労死等防止対策セミナー」をオンラインで開催。企業の人事や安全衛生担当者など約150名が参加した。

冒頭、冨田哲郎経団連副会長・労働法規委員長が過労死等防止に向けたビデオメッセージを寄せた。続いて、川人博弁護士(川人法律事務所)が企業に求める過労死等防止対策について、また伊藤昌毅弁護士(第一協同法律事務所)が安全配慮義務に関する裁判例の動向と企業の対応についてそれぞれ講演した。最後に、全日本トラック協会の大西政弘交通・環境部長から、トラック運送業界における取り組みについて説明があった。講演の概要は次のとおり。

■ 冨田副会長

企業にとって人材が競争力の源泉であり、社員が意欲と能力を十分発揮でき、また安全で健康に働ける環境を整えることは、経営の最重要課題である。過労死は絶対にあってはならないものであり、そのために過重労働を抑制していくことはもちろん、私ども経済界も含め、国を挙げて取り組んでいく必要がある。働き方改革が進展し、総実労働時間は着実に短くなっているが、いまだ過労自殺などの痛ましい悲劇が繰り返され、過労死等ゼロの実現には至っていない。本セミナーを参考に、働き方の見直しと職場環境の改善を引き続き推進するようお願いしたい。

■ 川人氏

過労死等(脳・心臓疾患、精神障害)の労災認定件数は年間約800件、うち死亡事案は年間約200件だが、労災認定数は、過労死の「氷山の一角」である。多くの職場で過労死と業務不正が同時に発生しており、過労死は企業の病理の表れといえる。過労死を防止することは、健全な会社経営を行うことにつながる。過労死の多くが、特に新規部門、業績困難部門、繁忙部門において発生しており、経営者は、これらの部署には特段の配慮を行わなければならない。

長時間労働の背景には、商慣行の問題があり、官公庁においても課題が顕在化している。発注条件・発注内容の適正化など、関係者間で働きかけを強めていくことが求められている。

昨今進んでいるテレワークにおいて、長時間労働化、深夜労働化などの健康リスクがみられる。テレワークに関する就業規則・労働協約等の改定や労働環境・勤務条件の整備を図ることが不可欠である。

■ 伊藤氏

いわゆる過労死が発生した場合、企業は安全配慮義務違反の有無が問われる。安全配慮義務の具体的な内容は、労働者が置かれた状況によって異なる。裁判例をみると、問題が発生した場合、結果からさかのぼって回避するための必要な作為義務の内容を論じられる傾向があり、使用者には厳しいものである。

安全配慮義務違反とならないために、使用者としては、(1)業務内容、業務量が適正であるか(2)労働時間(残業、休憩、休日、休暇)が過大ではないか(3)不規則(深夜)勤務がなかったか(4)職場環境が適正に整備されているか――の4点に留意する必要がある。これ以外にも健康診断の実施が重要となる。労働者側に脆弱性や持病がある場合、それを踏まえた時間管理を行う必要がある。また初期対応のまずさが紛争を拡大させる原因となるので、労働者やその遺族から労災申請が出されれば積極的に協力する姿勢が求められる。

■ 大西氏

道路貨物運送業は脳・心臓疾患の労災認定件数が最も多い業種であり、協会として過労死等防止計画を策定した。計画期間中(2018~22年度)に過労死等の20%削減など目標値を掲げており、具体的な対策として、(1)時間外労働の段階的削減(2)睡眠時間の確保と規則的な運行(3)点呼におけるドライバーの疲労・健康管理の強化――など8項目を盛り込み、積極的に取り組んでいる。ドライバーの過労死等防止のために荷主側の協力もお願いしたい。

【労働法制本部】

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