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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月10日 No.3479 新たな宇宙基本計画を踏まえた文科省の取り組みについて聴く -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は11月19日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合を開催し、文部科学省研究開発局の藤吉尚之宇宙開発利用課長から、新たな宇宙基本計画(2020年6月閣議決定)を踏まえた同省の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ わが国の宇宙開発利用

わが国は、他国に依存せずにロケットで衛星を打ち上げる自立的な能力を有している。現在は基幹ロケットとして、大型のH-ⅡAと小型のイプシロンロケットの2種類を運用している。

宇宙輸送分野では、米国のスペースX社や欧州のアリアンスペース社など、海外との競争が激化している。わが国のロケットの国際競争力を維持するため、信頼性の向上とコストの削減を両立しながら、H-ⅡAの後継機であるH3ロケットの試験機を21年度に打ち上げる。また、H3ロケットとの相乗効果を得られるよう、国際競争力を向上させたイプシロンSロケットを23年度に打ち上げることを目指している。

宇宙基本計画を受けて、40年代前半までに、抜本的にコストを下げた革新的将来宇宙輸送システムを実現したい。ロードマップを策定し、産学官が協力して研究開発を進めていく。

衛星は、重要な社会インフラの一つとして、気象予測、災害把握、通信、放送、測位、安全保障など、国民生活に不可欠となっている。例えば、「だいち2号」は、昨年10月の台風19号による災害状況の把握に活躍した。「いぶき」は、世界で初めて温室効果ガスの排出量の全球観測を可能にした。

今後は、高機能な衛星の開発を進めるとともに、先端技術を搭載した小型・超小型衛星を短期間で開発・実証し、高頻度で打ち上げていく。また、衛星データのユーザーを広げて、非宇宙分野も含めた幅広い用途での利用を推進したい。

■ 宇宙科学・探査

わが国の宇宙科学・探査は世界的に高く評価されている。例えば、「はやぶさ2」は、地球から約3億キロメートル離れた小惑星のサンプル採取に成功し、12月6日に試料のカプセルを地上に投下する。今後は、火星衛星探査計画に、サンプル回収の技術を活かしていく。

国際宇宙ステーション(ISS)計画への参画や、日本実験棟「きぼう」の運用を通じ、深宇宙補給技術や有人宇宙活動の技術等でも成果を上げている。11月からは、野口聡一宇宙飛行士がISSに滞在している。

昨年10月、わが国は米国の国際宇宙探査計画「アルテミス計画」への参加を決定した。今年10月には、日本を含む8カ国が宇宙空間の民生探査・利用の諸原則について合意した。ISSで蓄積した技術を月周回有人拠点「ゲートウェイ」への滞在や月面探査などに活用していく。

■ 21年度宇宙関係予算

21年度の宇宙関係予算の概算要求は、政府全体で昨年度比約50%増の約5440億円としている。文科省はおよそ半分の2809億円を要求しており、特にアルテミス計画に向けた研究開発の要求額を大幅に増やした。新たな宇宙基本計画の初年度であるため、予算の確保に努めていく。

【産業政策本部】

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