経団連は12月3日、東京・大手町の経団連会館で外交委員会(片野坂真哉委員長、大林剛郎委員長)を開催し、公安調査庁の和田雅樹長官から、わが国企業が留意すべき先端技術の流出リスク等について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ 広がる経済安全保障の動きと公安調査庁
昨今、自国の経済力を梃子にして地政学的な国益を追求する経済安全保障の動きが広がっている。各国が技術・データの流出防止や対内直接投資の強化等に取り組むなか、わが国においても、先端技術の流出には特に気を付けるべきである。
こうした観点から、公安調査庁では、テロリズムや大量破壊兵器拡散の問題に加え、経済安全保障に関する情報収集も強化している。
■ 留意すべき先端技術の流出リスク
近年、諜報活動のあり方が変化している。従来は政治・外交・軍事等に関する情報をめぐり政治家や政府職員が標的とされていた。しかし現在は、軍事転用可能な物資や技術も盗み出そうとされているため、企業や研究機関も対象となっている。
現実の諜報活動は、超人的なスパイ等が行うわけではなく、ごく自然なかたちで行われるので、見抜くことは難しい。例えば、展示会等の仕事の場や、趣味や娯楽の場で偶然を装い接触してくることがある。その後、飲食に誘い出し、対象の弱点や不満等を聞き出し、要求する情報のレベルや謝礼の金額を徐々に上げていく、というのが典型的なパターンである。一対一の面談は危険な兆候であると警戒することが対策となる。
また企業は、安全保障貿易管理上は禁止されている、輸出管理の甘い国を利用した迂回輸出による不正調達活動に巻き込まれる可能性もある。疑わしい手口としては、相手企業またはエンドユーザーのウェブサイトが見当たらない、商談の途中で突然エンドユーザーが変更される等がある。
意図せずして不正輸出に巻き込まれないためには、社員教育を通じた安全保障貿易管理に関する意識の向上、不正調達パターンへの精通、政府機関との連携等の対策に取り組むことが重要である。
■ 官民連携の重要性
企業は経済安全保障の最前線にいる。公安調査庁では引き続き情報収集・分析を行い、適切に周知を行っていく。企業からは懸念点を共有いただきたい。わが国企業などが標的となり得る技術流出の未然防止には、官民連携が不可欠である。
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講演後の意見交換では、技術流出防止に向けた社内教育を行うにあたり公安調査庁からの情報提供を希望する声が上がり、和田長官も前向きに検討すると回答した。
【国際経済本部】