経団連は2月9日、日本・香港経済委員会(國部毅委員長)をオンラインで開催し、在香港日本国総領事館の和田充広総領事(大使)から、最新の香港情勢や日本・香港関係等について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 香港の現状と展望
香港では、昨今の一連の動きにより、行政・立法面の「高度な自治」が大きく傷つき、報道・教育等における自由を制限する例も出ている。今後、香港政府・中央政府にとって政治的に敏感な時期を迎えることから、香港で何らかの混乱が生じるような事態は避けるべく政治的押さえ込みを図る状況が続く可能性は高い。
こうした懸念はあるものの、経済面では、香港は世界屈指の国際都市として、アジアで最も重要な国際金融センターの一つであり、中国と世界をつなぐゲートウエーでもあることに変わりはない。香港はアジア全体を俯瞰できる立地にあり、中国をみるうえでも本土とは異なる方法での情報収集が可能である。中央政府も香港の経済的な有用性・価値を認めている。
法の支配、司法の独立については制度改革を求める声があるなど、やや心配な面はあるが、今のところ維持されており、経済制度面における香港の利点は健在。米ドルとのペッグ制にある香港ドル、昨今の資本や人材の香港への回帰といった強みもある。
直近の香港経済は、一昨年の抗議活動や昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大等の影響を受け、6四半期連続のマイナス成長が続いているが、金融サービス関連は安定している。
■ 日本・香港関係の展望
香港は、広東・香港・マカオ大湾区構想(GBA)がうまく機能すれば、中国と世界をつなぐ連結地として、また、深圳との連携により科学技術イノベーションの拠点として、さらなる発展が期待される。
また、(1)現在、香港はESGファイナンスの拠点となるべく取り組んでいること(2)香港は16年にわたり日本産農林水産物の最大の輸出先であること(3)香港でも高齢化が進みつつあるなかで、介護・医療分野での日本企業の進出への期待が高いこと――などから、さまざまな分野で日本との協力の可能性があり、これまで以上に日本と香港の経済関係を深める大きなチャンスにあるといえよう。
社会主義の中国にとって、世界標準と価値観を持つ香港は今後も不可欠な存在。一国二制度が経済面で維持されている限り、香港は日本企業にとって引き続き極めて活用しがいのある場所であり続けると考えられる。
【国際協力本部】