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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年2月25日 No.3489 大きな転換点を迎えつつある中東情勢 -高橋外務省中東アフリカ局長が説明

高橋局長

経団連は2月9日、最近の中東情勢に関する懇談会をオンラインで開催した。外務省中東アフリカ局の高橋克彦局長から、主要国の動向、イラン核合意や中東和平をはじめとする中東地域の最新情勢について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 中東地域全体の相関図は変化

「アラブの春」と呼ばれる民主化運動から十余年が経過した。チュニジア、エジプトなどにおいて政権交代が実現したものの、その後、中東地域はさまざまな課題に直面している。経済面では、足元で新型コロナウイルスの影響や原油需要の落ち込みと油価の低迷、世界が取り組む地球温暖化対策など、予断を許さない状況にある。そうしたなか、各国の思惑はさまざまだろうが、UAE、バーレーンなど一部のアラブ諸国とイスラエルの国交正常化、カタールとサウジアラビア、UAEなど湾岸諸国間の関係改善が実現し、域内各国の相関図は変化してきている。

■ 米国の政策が中東地域に与える影響

バイデン米大統領は、イランによる核合意の遵守を条件に核合意に復帰する意向を表明した。一方、イランは今年6月の大統領選挙もあり簡単には譲歩せず、核合意遵守の前提として、はじめに米国の経済制裁の解除を求めており、両者の歩み寄りに向けた課題は多い。中東和平について、バイデン政権においても親イスラエル政策は不変だろうが、人道支援等を通じたパレスチナとの関係改善が見込まれる。今後、イスラエルは3月に総選挙、パレスチナでは5月に立法評議会、7月に大統領選挙が予定され、結果を注視していく必要がある。また、中東地域での駐留米軍削減方針は継続されるだろうが、治安情勢を踏まえ撤退のペースを緩める可能性がある。人権重視のバイデン政権が、一部の国に厳しい姿勢で臨むこともあるだろう。

■ 経済分野で地域における存在感を高める中国

中国は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路などの経済ツールを活用し、中東地域で存在感を増している。また、港湾整備やモスクの建設、首都移転など各種プロジェクトを通じて特定国との関係を強化している。このように、中国は経済パートナーとして大きな役割を果たしており、今後の動向に関心を払う必要がある。

■ 日本の中東政策

中東諸国は、産業構造や人口、教育などでそれぞれ特徴を有している。アラブの春とその後の経済社会の混乱等で、中間層が増えない国もある。今後は各国が、経済発展に向けた戦略を自ら考えていかなければならない。日本政府としては、長期的視点に立ち、欧米諸国とも連携し、各国の動向を注視しながら中東地域の政治の安定および経済の成長を後押しする役割を果たしていきたい。

【国際協力本部】

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