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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年3月4日 No.3490 ワーケーションの企業事例と経団連観光インターンシップの意義について聴く -観光委員会企画部会

経団連は2月15日、観光委員会企画部会(今泉典彦部会長)をオンラインで開催し、日本航空人財本部人財戦略部厚生企画・労務グループの東原祥匡アシスタントマネジャーから同社におけるワーケーションの取り組みについて、また、立教大学観光学部の斎藤明教授、西川亮助教から「経団連観光インターンシップ」の意義について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 日本航空(東原氏)

当社のワーケーションは、2011年から始まった経営トップ主導によるダイバーシティ推進の一環で行われたワークスタイル変革のなかで17年に導入された。15年ごろからのフレックスタイム制度やフリーアドレスの導入に始まり、在宅勤務からスタートしたリモートワークも17年にはテレワーク(週2回上限)として発展させた。

17年に年間総実労働時間の目標を1850時間としたが、この実現には年次有給休暇の取得が必須であった。休暇の取得促進は課題であり、「休暇が取れないため予定の旅行を取りやめている」「帰省先でもテレワークが行えたら」など社員からの声が上がっていた。そこで、テレワークの場所の要件を帰省先などでも可能とするよう見直し、休暇時に業務の一部を認める制度としてワーケーションを導入した。予定した休暇期間に仕事が入っても、残りの休暇を取得できるよう、セーフティーネットと位置づけている。社員は前向きに評価しており、当社の事業に欠かせない観光振興という面でも、平日の延泊や旅行回数の増大につながり、加えて分散の効果も期待できる。

ワーケーション導入に関する他社からの問い合わせは増えたが、少し大ごとに考えられている面があると感じている。社員一人ひとりでみれば、年に数回のことであり、実施の手続きも、前日までの休暇取得と場所の承認、当日の始終業の報告程度である。企業側の制度設計という点では、コストと労務管理の2つが課題と考えられることが多いが、テレワークの運用とほぼ同じであり、さまざまな職種の社員が取得できる。ワーケーションは、企業からみれば、時間と場所にとらわれない、新しいワークスタイルの推進の一つの手段となる点に魅力がある。また、個人やチームにとっては、いつもと異なる環境と経験を通じた自己成長につながる。社会にとっては、地域の経済社会の活性化をもたらす。

コロナ禍で新たな生活様式が進むなかで、採用をはじめ人材確保に向けた取り組みは、社員の立場で進めていく必要がある。また、地域への関心が高まるなかで、地域での共創には新しいワークスタイルがマッチする。ワーケーションを、これからの企業と地域の成長に向けた一つの重要な施策として推進していく。

■ 立教大学(斎藤氏、西川氏)

経団連観光インターンシップは、本学の観光学部3年生が対象で、「観光産業及び関連事業分野で活躍する人材の育成を念頭に、学内での事前研修の後、企業での実務研修を行い、受講者の実社会への理解とキャリアに関する意識を深めること」を授業目標としている。

11年に経団連からの呼びかけを受け、協力企業の支援のもとスタートして以降、学生に人気の講座となっている。担当教授は「日本で一番ぜいたくな講座」と宣伝している。毎年、約1.7倍の応募倍率のなかから選抜された、成長意欲の高い学生が受講。20年度もコロナ禍のなか、受講生は、オンラインベースのプログラムを通じて多くの学びを得ており、「会社や社会・業界の見識が増えた」など、総じて前向きな評価を寄せている。履修後の学生は、観光関連産業を中心に幅広い業種に就職している。

企業でのインターン受け入れにあたっては、さまざまな対応を依頼することになるが、一方で、若手社員が上司の視点を獲得するなど、副次的に自社の人材育成の効果を得られる面もあり、組織全体の活性化に向けた活用の余地があると考えている。21年度については、感染状況をみながらリアルとオンラインのミックスでの実施を検討している。より多くの企業の協力を得ながら、観光業界における革新的な人材の育成・輩出に向けた協働を推進していきたい。

【産業政策本部】

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