経団連は3月16日、提言「戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて-2020年度版」を公表した。
■ 環境変化を踏まえたインフラシステムの海外展開の推進
新型コロナウイルスの感染拡大、デジタル技術を活用する重要性の高まり、脱炭素化に向けた取り組みの強化、アメリカの新政権発足を契機とする国際経済秩序の再構築への動きなど、世界が大きな環境変化に直面するなか、インフラシステムの海外展開も新たな局面を迎えている。
経団連はこれまで、政府の「インフラシステム輸出戦略」の改訂に合わせ、毎年度、インフラシステムの海外展開に関する提言を取りまとめ、政府に働きかけてきた。
その結果、多くの要望が実現しており、同提言ではこの点を高く評価したうえで、昨年12月に政府が新たに策定した「インフラシステム海外展開戦略2025」の着実かつ継続的な実行と内外の情勢変化に合わせた不断の見直しを要望している。
■ 具体的要望
(1)対日本政府・機関等
喫緊の課題である新型コロナ対応として、プロジェクトの遅延や中断に対する支援の強化、現地における医療体制整備等を求めている。また、インフラシステムにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、カーボンニュートラルの実現に資するグリーンインフラの海外展開促進が必要であるとしている。
トップセールスや第三国市場連携など、案件獲得に向けた政府の推進体制を強化するとともに、O&M(オペレーション&メンテナンス)への重点支援や国際標準化・国際ルール整備の戦略的推進、PPP(官民パートナーシップ)促進に向けた支援強化、人材招聘の推進、企業関係者の安全対策等の必要性を指摘している。加えて、ODAやJICA海外投融資、JBIC投融資、貿易保険等のファイナンス支援の一層の拡充を求めている。
(2)対ホスト国
現地における新型コロナ感染対策の強化や、税金をめぐる問題ならびに支払い遅延等の各種トラブルの解決、各国の法制度およびビジネス環境の整備等は重要な課題であり、政府との連携が不可欠であるとしている。
■ ウィズ・ポストコロナの時代における重点分野
コロナ禍における新たなインフラニーズを的確に把握しながら、わが国の技術力やノウハウ、経験等の強みをもとに重点分野を明確化し、選択と集中を図る必要がある。同提言では、グリーンインフラ、デジタル化、スマートシティ、健康医療インフラ、生活・社会基盤インフラの5つについて、具体的な対象や推進方策を提示している。
【国際協力本部】