経団連は2月26日、カナダ委員会(佐藤洋二委員長、植木義晴委員長)をオンラインで開催し、川村泰久カナダ駐箚特命全権大使から、カナダの政治経済関係の現状と今後の展望について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 新型コロナウイルスの感染状況など
カナダは現在、2回目のロックダウンの効果などで新規感染者数が減少している。一方で、昨年末から変異株の感染者が確認されており、今後、変異株の感染者数が変異株以外の感染者数の減少を上回る可能性が報じられている。こうしたなか、カナダ政府は4億回分以上のワクチン確保を発表し、2月22日時点で約150万回のワクチン接種が実施されている。さらなるワクチンの安定確保のため、トルドー首相自ら、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長に直談判を行っている。トルドー首相は9月末までに希望する全国民にワクチン接種を終えると繰り返し強調。同時に、カナダ国内でのワクチン製造を進める動きもあるが、供給開始は秋以降になるといわれている。コロナ禍で落ち込んだ経済は新型コロナ前の水準の7~8割程度まで回復してきたものの、足もとでは減速の懸念がある。カナダ政府が経済活動停滞の長期化を見据えて40兆円規模の支援策を講じた結果、雇用を中心に底堅い数字が出てきている。
■ カナダ政府の外交
2月3日、日加首脳電話会談が開催された。法の支配や、FOIP(Free and Open Indo-Pacific、自由で開かれたインド太平洋)の実現などについて合意し、新型コロナ対策や気候変動対策でも緊密な連携を確認した。
カナダの対米関係については、バイデン政権発足後、すでに首脳会談を2回実施している。両国は新型コロナ対策、気候変動対策、中国政府によるカナダ人拘束事案などを優先課題に設定し、ロードマップを策定した。サプライチェーンの強靱化に向けた協力についても合意に至り、今後、再生可能エネルギーの活用によるEV向け貯蔵バッテリーなどの分野で連携を進めていくことが期待されている。
カナダにとって、中国との関係も外交上の最大の課題の一つである。カナダ政府は2018年、米国の要請に基づき、バンクーバーにおいてファーウェイの孟晩舟CFO(最高財務責任者)を拘束した。これに対して、中国政府がカナダ人2名を拘束するなどの動きを示したため、カナダ国民の中国に対する印象が著しく悪化している。トルドー首相も、このように硬化した世論を背景とした対中姿勢を示している。
■ 今後の日加協力
気候変動対策・エネルギーなどの分野で日加協力がさらに前進することへの期待は高い。両国ともに50年におけるカーボンニュートラルの実現を目標に掲げ、グリーン分野を産業政策の中心に置くなど、政策の方向が同じである。水素については、カナダ連邦政府は国家水素戦略を策定し、50年までに国内エネルギー供給の3割を賄い、世界トップ3の生産国になるとの目標を掲げている。加えて、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、二酸化炭素回収・有効利用・貯留)技術の開発やSMR(Small Modular Reactor、小型モジュール型原子炉)などでも協力の余地がある。
カナダは将来、水素立国やAI立国を目指しているように感じている。カナダは世論調査で国民の8割が親日と示すように、日本に対して非常に友好的であり、今後、日加協力が一層発展する可能性が高い。在カナダ日本国大使館としては、現在のカナダと将来の日本との協力可能性についてまずはよく知ってもらうための広報に力を入れるとともに、協力案件の具体化をさらに推進していく。
【国際経済本部】