経団連は3月3日、経済財政委員会企画部会(中島達部会長)をオンラインで開催し、内閣府の黒田岳士大臣官房審議官(経済社会システム担当)から、「新経済・財政再生計画」の進捗状況と今後の取り組みについて説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ これまでの取り組み
骨太方針2015における「経済・財政再生計画」では、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針に、財政健全化目標として、(1)2020年度のプライマリーバランス(PB)黒字化(2)債務残高対GDP比の安定的引き下げ――を掲げた。そのうえで、改革工程表を策定し、毎年度、進捗管理を行ってきた。
18年3月には、計画の中間評価を行った。経済は良い状況にあったが、PBの改善については、歳出効率化努力はなされたものの、(1)補正予算の影響(2)税収の伸びが緩やかだったこと(3)消費税率引き上げの延期――により、進捗が遅れた。同年5月の試算では、PB黒字化の達成は、景気回復と歳出効率化の継続を前提にしても、24年度になると試算された。
こうした状況を踏まえ、骨太方針2018内で新たに「新経済・財政再生計画」を定めた。基本方針を継続するとともに、PB黒字化の目標年度を25年度に変更した。また、団塊の世代が後期高齢者入りする22年の前までの19~21年度を「基盤強化期間」と位置付けて、財政健全化に取り組むこととした。
■ 足もとの動向と今後の取り組み
足もとでは、感染症対応の補正予算による歳出増や、経済の下振れによる歳入減から、PBが悪化した。他方で、21年1月の試算では、これまで同様の歳出改革を行えば、26年度にPBを黒字化できるが、25年度で約2兆円の赤字が残ると機械的に導かれた。今後、具体的にどのような改革努力を積み重ねていくのか、骨太方針2021に向けて議論していく。
骨太方針2021に向けた検討課題として、感染拡大防止策やポストコロナの経済社会に向けた改革(人材育成、デジタル化・グリーン化、地方の取り組みなど)のほか、経済・財政一体改革の推進を挙げている。最近の国会で、菅義偉首相は、「経済あっての財政」を基本に、25年度のPB黒字化などを旗印として、歳出・歳入一体改革を進めることを明言している。
PB黒字化の目標年度については、前回は5年間の計画で目標年度まで残り2年となった段階で見直しを行ったが、今回は7年間の計画でまだ3年間しか経過していない。これまで同様の歳出効率化努力をすれば、26年度にPBは黒字化すると試算されている。税収が試算より上振れする可能性もある。今後の議論では、こうした点を踏まえる必要があると思う。
財政健全化目標の達成は政府だけが取り組む事項ではなく、国民全体や企業の行動変容(予防・健康を通じた医療費の増大の抑制、イノベーション、生産性向上、賃金引き上げ等)が必要である。ぜひ皆で協力して取り組んでいきたい。
【経済政策本部】