経団連は3月4日、内閣府と共催で、「ウィズ・ポストコロナ時代における企業のダイバーシティ推進に向けて」をテーマにダイバーシティ・マネジメントセミナーをオンラインで開催し、全国から約1000名が参加した。魚谷雅彦ダイバーシティ推進委員長・資生堂社長兼CEOによる基調講演の後、大薮貴子武田薬品工業チーフグローバルコーポレートアフェアーズオフィサー、岩村水樹グーグルバイスプレジデントが自社のダイバーシティ推進における取り組み事例を紹介した。概要は次のとおり。
■ 基調講演「資生堂のダイバーシティ経営」
魚谷資生堂社長兼CEOは、「資生堂が、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニー”を目指すためには、モノカルチャーのヒエラルキー型の縦割り組織を排し、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のカルチャーに基づくフラットで活発な組織をつくることが重要」との認識を示したうえで、「多様な背景を持つ人が集まるほど新しい価値が生まれ、会社や社員の能力も向上させてくれる。個人レベルでの他者への気づきや関心度を社内全体で高めるとともに、パイプラインを強化するため、比較的女性が少なかった部門長の層に着目し、サクセッションプランの改革に力を入れるなど、徹底した人材育成計画を進めた」と取り組みを紹介。その結果、収益も向上し、時価総額も約4倍にまで伸びたと述べた。
そのうえで、「ダイバーシティを推進するうえで数値目標がすべてではないが、皆で共有できる目標を掲げることも有効である。当社の国内の女性管理職は現在35%にまで達しており、2030年には50%を目指す」ことを表明した。
最後に、「組織のD&Iが不十分ならば、D&Iの重要性やその実現により起こる変化をあらためて考えてみてほしい。D&Iは、企業の活性化や従業員の自己実現、そして日本社会をより幸せに、豊かにすることができる。ジェンダーへの関心が高まっている今こそ、ダイバーシティ推進の好機である」と述べ、各社のD&Iへの取り組みを呼びかけた。
■ 事例紹介
武田薬品工業の大薮チーフオフィサーは、「10年ほど前から買収や売却等を進めており、社内のグローバル化が急速に進み、企業理念にもDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)を明文化し、社員の属性に限らず個人の内面も考慮したマネジメント等を進めている。経営陣は国籍、年齢、性別いずれも多様な人材がそろっている」と説明。課題の残る国内の多様性にもKPIを設けて取り組んでいること、多様な働き方を進めていたため、コロナ禍でもいち早くテレワークやフレックスワークに対応できたことを紹介した。
ポストコロナに向けて、VRで今後の職場環境を疑似体験することでこれからの働き方を検討したり、DE&Iの重要性について自らの経験を社員に語る機会を設けたりしているとし、経営陣のロールモデルづくり、社員一人ひとりへの適切な支援、日本と海外のキャリアラグ解消などに取り組むとした。
グーグルの岩村バイスプレジデントは、「D&Iはイノベーションのためにも不可欠である」としたうえで、同社の女性比率は20年には32%にまで上昇し、育児休業取得率は男女問わずほぼ100%に達していると紹介した。そのうえで、失敗リスクを許容し心理的安全性のあるカルチャーの醸成、多様な視点による採用活動やD&Iを重視した人事評価、多様な働き方のためのコミュニケーションインフラの整備などに取り組んでいることを説明した。
また、Googleマップの音声ガイドシステムなど製品やマーケティングにもD&Iの視点を取り入れており、Women Willというプロジェクトでは、1000以上のサポーター企業とともにテクノロジーによる女性活躍に向けた実証実験や、リーダーシッププログラムを実施しているとした。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】