経団連は3月3日、会員を対象に「経団連の活動に関する報告会」をオンラインで開催した。久保田政一事務総長が、経済外交に関する経団連の取り組みを報告し、全国の会員約300名が視聴した。報告の概要は次のとおり。
■ 「。新成長戦略」と国際経済秩序の再構築
コロナ禍における経済活動の停滞や、いくつかの国で台頭する保護主義や自国第一主義も相まって、世界経済は、2009年以来のマイナス成長に陥った。このような状況を打開し、新たな成長の道筋を示すべく、経団連は、昨年11月に「。新成長戦略」を取りまとめ(11月19日号既報)、その柱の一つとして「国際経済秩序の再構築」を提唱した。具体的には、「包摂的かつ強靱な貿易投資枠組みの実現」「グローバルな社会課題の解決」「経済安全保障の確保」に向けて、精力的に取り組んでいる。
■ 包摂的かつ強靱な貿易投資枠組みの実現
世界経済を成長軌道に戻すためには、貿易投資の枠組みの立て直しが課題となっている。経団連は、かねてWTO改革ならびに経済連携協定(EPA)、投資協定を通じた貿易投資の促進に取り組んでおり、RCEPの妥結(20年11月)、日英EPA発効(1月)など、具体的成果として結実している。また、昨年7月には、提言「コロナの下での自由で開かれた貿易投資の実現」を公表し(7月16日号既報)、自由で開かれた経済秩序の構築に向けて具体策を提言している。
■ グローバルな社会課題の解決
(1)質の高いインフラ投資
「Society 5.0 for SDGs」の実現に向け、強靱で長持ちし、環境や社会に配慮した、質の高いインフラを普及させる必要がある。経団連は毎年、会員企業へのアンケートに基づき、インフラシステムの海外展開の推進についての提言を取りまとめ、これまでに、首相・閣僚によるトップセールスの増加や各種ファイナンス支援スキームの整備・拡充等が実現している。
(2)気候変動対応
米国、EU、中国などの国々がグリーン分野を国家戦略の基軸に位置付けるなか、日本も菅義偉首相が昨年10月の所信表明演説で、2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。経団連は、昨年6月に企業のイノベーションを通じた脱炭素社会への挑戦を後押しする新プロジェクト「チャレンジ・ゼロ」を開始し(6月11日号既報)、ESG投資の呼び込みや、イノベーション創出に向けた同業種・異業種・産学官の連携を図っている。
■ 経済安全保障の確保
技術覇権をめぐる米中対立が先鋭化しており、バイデン政権下でも、この状況はしばらく続くと予想される。米中両国で幅広くビジネスを展開する日本企業が円滑に事業を継続できるよう、経団連では、日本政府とよく連携しながら、米中両国政府に対して働きかけを続ける。また、政府に対して、優位性を確保すべき機微技術の範囲の特定を含め、安全保障とグローバルな事業展開との両立が図れるような環境整備を求めていく。
【国際経済本部】