経団連の環境安全委員会地球環境部会(右田彰雄部会長)は3月30日、オンラインで会合を開催した。
菅義偉首相による2050年カーボンニュートラル宣言以降、その実現に向けた各種の取り組みが加速している。排出削減に向けた取り組みがグローバルで実効的かどうかの判断にあたり、製品・サービスのライフサイクル全体で排出量を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)が有効な手法の一つである。そこで、CO2削減貢献量の評価・表示・標準化の動向について、日本LCA推進機構の稲葉敦理事長から説明を聴いた。
あわせて、今般、経団連低炭素社会実行計画第三者評価委員会の2020年度評価報告書を取りまとめたことから、同報告書について筑波大学名誉教授の内山洋司委員長から聴いた。経団連が推進する低炭素社会実行計画の透明性・信頼性・実効性を向上させる観点から、経団連では、第三者評価委員会による評価を受けている。両氏の説明の概要は次のとおり。
■ CO2削減貢献量の評価・表示・標準化の動向(稲葉氏)
脱炭素社会の実現には、製品・サービスの使用・利用段階も含めて排出量を削減することが重要である。使用・利用段階での排出削減の結果を定量的に示したものを「削減貢献量」と呼ぶ。
削減貢献量の評価や報告・表示、その標準化に関する動向や課題、今後の方向性等の調査・研究の目的は、ライフサイクル全体を通したグローバルな排出削減のあり方を検討する際の一助とすることである。
削減貢献量の算定方法は、ベースライン(比較製品)からの排出削減量、部品の寄与率、社会での普及量の三要素を掛け合せたものである。経団連は、コンセプトブック「グローバルバリューチェーンを通じた削減貢献」で削減貢献量の考え方を打ち出し、各社・業界の多様な取り組み事例を国内外で紹介している。
現在、カーボンニュートラリティーに関する国際規格(ISO14068)の開発が進められており、削減貢献量の考え方も原案に含まれている。わが国の意見を反映すべく議論に参画している。
■ 第三者評価委員会報告書(内山氏)
経団連低炭素社会実行計画に基づく19年度の実績に対し、次のとおり評価した。第一の柱「国内の事業活動における排出削減」については、(1)20年度目標に向け、多くの業種が着実に削減を進めていること(2)30年度目標では、すでに目標を達成した業種、目標の見直しを行った業種が多くあること――を高く評価する。他方、フェーズⅠの最終年度は、20年度実績をフォローアップすることとなるが、新型コロナウイルスによる生産活動等への影響が顕在化する年であり、目標達成の可否にどのような効果を及ぼすか各業種において分析することが望ましい。
第二の柱「主体間連携の強化」、第三の柱「国際貢献の推進」については、多くの業種における日本の優れた省エネ製品・サービス・技術の国内外での削減貢献の定量化事例の増加や、削減貢献の評価手法の国際規格化への取り組みなどが評価に値する。
第四の柱「革新的技術の開発」では、基礎研究や実証段階にある多くの取り組みが評価できる。2050年カーボンニュートラルに向け、政府の基金等を活用して早期に社会実装できるよう、官民一体となって取り組むことを期待する。
【環境エネルギー本部】