経団連は4月7日、イノベーション委員会(山西健一郎委員長、畑中好彦委員長、田中孝司委員長)をオンラインで開催し、光科学イノベーションセンターの高田昌樹理事長、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの村松淳司センター長から、次世代放射光施設計画について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 次世代放射光施設
次世代放射光とは、巨大な加速器を使ってつくり出す、太陽の10億倍の明るさをもつX線であり、コヒーレンスという光の性質も極めて高い。次世代放射光を利用すると、これまで平均化され切り捨てられてきた情報も含むナノの特徴を可視化できる。産業界、学術がさまざまな研究・技術開発を行う際の基盤技術としてナノの可視化技術を提供することで、研究開発の仮説検証サイクルの質とスピードを上げることができる。
■ コアリション・コンセプト
放射光の先端活用と、産業界の垣根を取り払い、次世代放射光をオープンイノベーションのエンジンとすることが、コアリション・コンセプトの役割である。
1口5000万円で10年間の利用権を獲得することで、コアリションに参画でき、現在も企業の参画を募っている。コアリションメンバーは、課題申請・審査不要で施設を利用できるため、技術漏洩のリスクを回避できる。得られた成果の占有ができ、学術研究者とのマッチングの機会も得られる。さらには、産学協創、異業種企業間のコラボレーションの機会拡大にもつながる。
コアリションへの参画を表明した企業は、他施設を活用し、フィージビリティースタディーを行うことができる。現在、50社が学術との先行マッチングにより実験を行い、成果を上げている。
■ 東北大学の関わり
東北大学の産学協創と、課題解決型研究推進の中心として整備が進む青葉山新キャンパスに、次世代放射光施設を建設中である(2023年完成予定)。新キャンパスは、仙台駅から地下鉄で9分という従来の放射光施設に比べ好立地にある。
東北大学は、官民地域パートナーシップの地域パートナー(代表=光科学イノベーションセンター〈PhoSIC〉)の一員としてプロジェクトに参画。さらに、地域パートナーの役割を達成するために、コアリションメンバーへの加入を決定した。学内に全学組織の国際放射光イノベーション・スマート研究センター(SRIS)を設置し、コアリションビームラインへの技術供与、フィージビリティースタディーのサポート等を行う。
これらの活動を通じて、次世代放射光施設を中核とするリサーチコンプレックスの形成を目指している。
【産業技術本部】