経団連は4月7日、農業活性化委員会(十倉雅和委員長、佐藤康博委員長、磯崎功典委員長)をオンラインで開催し、元農林水産事務次官の奥原正明氏から、農業の成長産業化に向けた課題や、経済界への期待について聴くとともに懇談した。講演の概要は次のとおり。
これまでの農業の問題点は、「厳しい、儲からない、補助金が必要」と言い続け、従来の仕組み・やり方に固執し、農業を特別視して他産業との連携や改革を拒んできたことにある。
成長産業化のポイントは、「農業の目指すプラスイメージの明確化」「時代に合わせたビジネスモデルの改革」「経済界との連携・協調」である。
農業が、産業として自立し、輸出を含めた成長産業となり、地域経済を牽引する産業となることを目指して、本格的農業経営者に農地を集積・集約化し、自由に経営展開できるようにしていくことが重要である。
農業をめぐる状況は、1970年ごろに大きく変わっており、食料需給は不足基調から過剰基調となり、農業構造も多数の均質・零細農業者という構造から階層分化が進み、本格的経営者と兼業農家に分かれた。
こうした時代の変化を踏まえて、99年に、新たな農業政策の基本方針として「食料・農業・農村基本法」が制定されている。この具体化に本格的に取り組んだのが安倍晋三内閣であり、一連の農政改革(農地バンク法、農協改革、生産資材価格の引き下げ、流通ルートの短縮、輸出促進、スマート農業など)は、基本法に即したものである。
農地バンク法は、各県1つの農地バンクが農地を所有者から借りて、本格的経営者に転貸する仕組みで、常に両者の中間に介在することで、転貸先を変更し、農地利用の面的集積を目指すものである。これができないとスマート農業は普及しない。
農協改革は、農協組織の統制色を排除して、農業者や各農協が自由に経済活動を行えるようにし、また、農協のビジネスモデル(農産物販売・生産資材販売)を時代に合うように変更することで、所得向上を図ろうとするものである。
スマート農業の実現に向けて、農業者を含めて産学官の連携で技術開発を行い、コストも含めて農業者が使えるものにしなければならない。その普及には、規制改革も必須である。
こうした改革に抵抗する勢力も根強く、順調に進んでいるとはいえないが、この方向を堅持して着実に推進していくことが、農業の成長産業化に不可欠である。
農業の成長産業化に向けて、経済界は農業界の「誰」と組むのかを考えてほしい。新しいビジネスモデルを構築できる相手を見極めて、中長期的な視点で安定的に取り組むことが大切である。その姿勢がきちんと伝われば、農業界と良い関係が構築できると思う。
【産業政策本部】