経団連は3月30日、小川和也前駐アルジェリア特命全権大使との懇談会(日本アルジェリア経済委員会=佐藤雅之委員長)をオンラインで開催した。小川大使から、アルジェリアの政治経済情勢や日本との関係について聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 19年の民衆デモと政権交代の実現
アルジェリアでは、2019年2月以降、20年にわたるブーテフリカ体制の腐敗に対して、大規模な民主化デモが発生した。これを機に、ブーテフリカ体制は崩壊し、同年12月の大統領選挙によってテブン元首相が大統領に就任した。低調な投票率、得票率から大統領の正統性を問う向きもあるものの、老若男女が参加し1年間続いた平和的なデモによって、民主的に政権交代を実現したことは、アルジェリアにとって歴史的な出来事であったといえる。
■ テブン大統領による政治改革
テブン大統領は、前体制と決別した「新しいアルジェリア」の構築に向け、憲法改正による政治改革、経済改革を打ち出した。テブン大統領が特に注力する憲法改正では、自由権の拡充、汚職対策の強化、司法の独立性の確保などの前向きな要素が盛り込まれ、20年11月の国民投票において可決、成立した。
しかし、憲法改正の投票率はわずか23%と極めて低い水準にとどまり、大統領自身の新型コロナウイルス感染もあって、これを機に国民の信頼を勝ち得るという政権の思惑は外れてしまった。今後、今年6月に予定されている国会議員総選挙は、アルジェリアの将来を左右するものとして注目される。
■ アルジェリアの経済政策および日本との経済関係
アルジェリア経済は石油・ガスの輸出に大きく依存しており、政府はかねて産業の多角化や外国投資の誘致を進めてきた。テブン大統領もこれを踏襲し、エネルギー等の戦略的部門を除き、外資の出資比率を最高49%に制限する51/49原則が撤廃されるなど前向きな動きがみられる。しかし、自動車産業における国内調達比率の引き上げによって、相次ぐ外資企業の撤退を招くなど、産業政策全般に関して、実効性のある政策が採用されるか先行きは不透明である。
日本とアルジェリアの経済関係について、昨今、日本は中国や韓国、欧州と比較して、貿易面での立ち遅れが顕著である。アルジェリア側は、自動車、医薬品、農産品加工、スタートアップ等の日本企業の誘致を強く求めている。今後、投資協定の締結や租税条約の交渉開始等が実現し、要人往来、官民合同ミッションの派遣などを梃子として、二国間経済関係が一層強化されることを期待する。
【国際協力本部】