経団連は4月14日、戦略国際問題研究所(CSIS)とオンライン懇談会を開催し、マシュー・グッドマン経済担当上級副所長から、経済安全保障をめぐる動向と日本企業への示唆等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 経済安全保障をめぐる現状
経済安全保障自体は以前から議論されてきたが、中国の台頭等により、近年特に注目されている。
経済安全保障を目的とする規制は、禁止事項のみを明示するネガティブリストが好ましい。企業が自由な事業活動を行えるよう、政府に環境の整備を求めるのは当然だ。しかし、企業も政府の安全保障上の懸念を理解しなければならない。2021年のいま、これが現実だ。
■ 4つの政策ツール
経済安全保障を確保する政策として、大きく4点が挙げられる。一つ目は、重要技術・サプライチェーンを保護することである。この前提として、「重要技術」の対象や、「保護」の意味を考える必要がある。技術の進展は速いので、対象となる技術のリストは一定の基準のもとで、状況に応じて適宜、見直していかなければならない。具体的な手法は、投資審査、輸出管理、研究インテグリティの確保、サイバーセキュリティの強化、サプライチェーンの強靱化等である。
二つ目は、既存の国際ルールや標準を強化することである。知的財産保護や補助金等に関するWTOルールを強化すること等が考えられる。
三つ目は、新たなルールや標準を設定することである。TPPでは、国営企業やデジタルに関するルールが設けられた。デジタル化が進むなか、プライバシーやセキュリティに関するルールが必要である。
四つ目は、自国の経済力を強化することである。橋梁等の物理的なインフラに加え、教育や研究開発に投資することは、経済的な競争のためだけでなく、国家安全保障の観点からも重要である。
以上に加え、有志国等で協力することも重要である。例えば、ある国だけが投資規制を厳格にしても、規制が緩い他国から技術が流出する可能性がある。全く同じ制度である必要はないが、同等性は確保すべきである。
■ 経済界の役割
経済安全保障について、米欧の企業は非常に活発に活動している。経団連が欧米の経済団体と議論し、守るべき技術に関する共通の原則をつくることができれば、日米欧の政府にとって非常に有益だろう。
【国際経済本部】