1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2021年5月20日 No.3499
  5. 農泊・農福連携の政策と企業の取り組み

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年5月20日 No.3499 農泊・農福連携の政策と企業の取り組み -農業活性化委員会企画部会

経団連は4月20日、農業活性化委員会企画部会(澁谷直樹部会長)をオンラインで開催し、「農泊」と「農福連携」をテーマに、農林水産省をはじめ関係者から、各政策の概要と先進事例を聴くとともに意見交換した。

同会合の冒頭あいさつで、農水省農村振興局の山口靖農村政策部長は、「地域資源を活用した食や生活体験等を楽しむ農泊は、地域活性化の一つの手段となる。また、農福連携は、障がい者の社会参加と農業界の人材確保につながる施策であり、今後の発展に期待している」と述べた。続けて、農福連携等応援コンソーシアムの皆川芳嗣会長は、SDGs(持続可能な開発目標)達成などの観点から、企業が農福連携に取り組む価値などに言及し、さらなる推進を求めた。

各政策、先進事例の説明概要は次のとおり。

■ 農泊の推進について

①農水省農村振興局都市農村交流課(冨田晋司農泊推進室長)

政府は、農泊の実施体制構築に向け、多様な関係者が参画する地域協議会を支援している。農泊の実績は伸びており、リモートワークの拡大から、ワーケーションの問い合わせも増加している。一方で、観光コンテンツづくりなど、地域一丸となった取り組みが必要であるものの、人材確保に課題があり、推進体制が脆弱な地域も少なくない。このため、企業版ふるさと納税(人材派遣型)や地域活性化起業人などの活用を通じ、企業による農泊地域への人材支援をお願いしたい。

②大田原ツーリズム(藤井大介社長)

当社は、栃木県大田原市と共に、グリーン・ツーリズムやホテル事業等を行っている。同市には特別な観光資源はないが、農泊を中心とした取り組みにより、宿泊客が増え、農家との交流も広がっている。耕作放棄地の開墾や廃校での運動会等などをイベントとして仕立てることで、地域資源の再生・活用も行っている。課題は人材の確保であり、大企業の人材なら、誰でも活躍の場がある。ぜひ農泊などで地域に長期滞在し、地方活性化に一緒に取り組んでもらいたい。

■ 農福連携について

①農水省農村振興局都市農村交流課(元木要都市農業室長)

障がい者雇用の法定雇用率の達成割合が48%にとどまっているなかで、農福連携は障がい者雇用を推進するための一つの手段と考えられる。政府は全国規模での推進に向けて、農福連携等推進ビジョンの策定や農福連携等応援コンソーシアムの設立、ノウフク・アワードの開催等に取り組んでいる。企業には、特例子会社による農業参入や、農福連携で生産された農産物の活用等により、推進の後押しをお願いしたい。

②帝人ソレイユ(鈴木崇之統括マネージャー)

当社は帝人の特例子会社であり、胡蝶蘭や有機野菜の栽培・販売を主な事業としている。障がい特性に応じた業務分担等により商品の高付加価値化に取り組んでおり、その品質は社内外から高い評価を得ている。親会社のCEOは農福連携の意義に深く共感し、胡蝶蘭を贈答用として活用している。企業における農福連携の推進には、トップの理解と社内外への発信がとても重要と感じる。2019年の創業以来、黒字化に向けて取り組んでおり、将来的には当社をモデルに、農福連携の支援や大企業同士の連携等を進めていきたい。

【産業政策本部】

「2021年5月20日 No.3499」一覧はこちら