内閣総理大臣の菅義偉です。第10回日本経済団体連合会定時総会にお招きいただき、誠にありがとうございます。
まず、本日まで会長を務められた中西会長に、この場をお借りして、厚く御礼を申し上げたいと思います。新型コロナウイルスで日本経済が厳しい局面を迎えるなか、感染防止対策にも幅広くご協力いただき、また、ポストコロナも見据えた経済成長に向けて、大変なご尽力をいただきました。
新たに会長に就任される十倉新会長におかれましては、世の中の状況が目まぐるしく変化するなか、共に手を携え、新しい時代への挑戦を続けてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
新型コロナとの闘いは、わが国でも、世界でも、今なお続いています。諸外国の状況をみても、感染対策の切り札となるのはワクチン接種です。国民の皆さまお一人お一人が、一日でも早く接種することができるようにする、そして命と健康を守る、これが政府の役割です。しかしながら、政府の力だけでは、この難局を乗り越えることはできません。企業の皆さまにおかれては、新型コロナの影響が長引くなかで、厳しい状況にもかかわらず、なんとか雇用も守り、休業要請、時短営業にご対応いただいております。経団連に主導いただきながら、テレワーク、産業医の方々の協力による地域や職場の皆さまへの接種など、さまざまなご協力をお願いしております。多大なお力添えをいただいておりますことをあらためて心より感謝申し上げます。
ポストコロナを見据えるなかで、われわれには、官民連携して、日本経済の未来に希望を与える新たな成長の原動力をつくり上げていくことが求められています。そのカギとなるのが、グリーンとデジタルです。集中豪雨、森林火災、大雪など、近年世界各地で発生する異常気象は、気候変動が大きな要因といわれ、脱炭素化は、待ったなしの課題です。同時に、気候変動への対応は、経済の制約ではなく、むしろ日本を力強く成長させる原動力となる、この思いで、私は2050年カーボンニュートラルを宣言し、成長戦略の柱として取り組みを進めてきました。4月には、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて、挑戦を続けていくことを表明しました。達成は決して容易なものではありませんが、世界のモノづくりを支える国として、次の成長戦略にふさわしい、トップレベルの目標を掲げることで、世界の脱炭素化のリーダーシップを取っていきたいと考えています。今後は、目標の達成に向けて、具体的な施策を着実に実行し、経済と環境の好循環を生み出していく必要があります。新たに創設した2兆円の基金や、グリーン国際金融センターの創設、税制優遇、規制改革、標準化、国際連携など、あらゆる施策を総動員します。新産業や雇用を創出することで、経済社会に変革をもたらしてまいります。経団連各社各位のご協力をお願い申し上げます。
先日、デジタル改革関連法案が成立しました。わが国は、デジタル新時代に向かって、大きく歩み出します。デジタル化の遅れは、長年の課題であり、今回の感染症においても、さまざまな課題が浮き彫りになりました。私は、いま思い切ってデジタル化を進めなければ、日本は変えることができない、そういう思いから、総理就任直後にデジタル改革を目指し、スピード感を持って進めてきたものです。マイナンバーカードの普及率は4割です。マイナンバーカードを使えば、国や自治体へのさまざまな申請が自宅のパソコンやスマホから可能になります。本年10月からの保険証や、令和6年度中の免許証との一体化も進めます。令和4年度からは、あらかじめ同意しておけば、転勤で引っ越しても銀行などで口座の住所変更をする必要はなくなります。誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けることができる、世界に遜色のないデジタル社会を目指し、9月に発足するデジタル庁が司令塔となって、あらゆる改革を一気に進め、官民のデジタル化を強力に推進します。
新型コロナとの闘いは、予期せぬ変異を繰り返すウイルスの動きもあり、まったく予断を許さないものとなっています。しかしながら、厳しい闘いにも必ず終わりがみえてくると確信しています。すべての国民の皆さんにワクチンをお届けするという経験したことのない挑戦を何としてもやり遂げ、安心した日常を取り戻し、わが国経済を力強く成長させることができるよう、私自身が先頭に立って、全力を尽くします。引き続き皆さんのご協力を、何とぞお願い申し上げます。
最後になりましたが、日本経済団体連合会の皆さまのさらなるご活躍を祈念いたしまして、私のあいさつとさせていたただきます。