1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2021年6月24日 No.3504
  5. サステナビリティ情報開示等をめぐる国内外の動向

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月24日 No.3504 サステナビリティ情報開示等をめぐる国内外の動向 -金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォース

経団連は6月8日、金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースをオンラインで開催し、金融庁の桑田尚総合政策企画室長と園田周国際会計調整室長から、サステナビリティ情報開示等をめぐる国内外の動向について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ サステナブルファイナンス有識者会議(桑田氏)

サステナブルファイナンスの推進に向けた課題を昨年12月から議論し、報告書の取りまとめに向けて検討を深めている。

「企業開示の充実」に向けた議論では、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)等に基づく気候関連開示の質と量を充実させることが重要であるとしている。今後、金融庁では、サステナビリティ情報開示のあり方を幅広く検討する予定である。

「市場機能の発揮」に向けた議論では、市場の各関係者が期待される役割を発揮することが求められるとしている。重要性が増すESG(環境・社会・ガバナンス)評価・データ提供機関に関して、今後、その行動規範のあり方を検討する予定である。また、グリーンボンド等について、実務上有益な情報が得られる環境の整備や、ESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みの構築を取引所等に期待する。

「金融機関の投融資先支援とリスク管理」については、気候変動の影響を把握し、強靱なビジネスモデルを構築する観点からの金融機関の取り組みが必要である。金融庁では、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)が公表したハンドブック等を踏まえ、監督上のガイダンスを作成する予定である。

■ サステナビリティ基準をめぐる国際的な動向(園田氏)

IFRS財団は、昨年9月に、サステナビリティに関する国際的な報告基準を策定するための基準設定主体の新設に向けた市中協議文書を公表した。市中協議文書に対し、経団連を含むわが国の主要な関係者で構成されるIFRS対応方針協議会から意見を発信した。

市中協議の結果を踏まえ、今年3月にはIFRS財団が、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置に向けた「戦略的方向性」を公表している。ISSBの基準開発においては、投資家の判断に重要な情報にフォーカスし、TCFD等の既存の枠組みや作業などをベースとして、まずは気候関連の報告に注力することが示された。さらに、IFRS財団は4月30日に、ISSBの設置に向けた定款改訂案を公表し、ISSBのメンバー構成などについて市中協議を開始している。

6月4、5の両日に行われたG7財務大臣・中央銀行総裁会議においても、IFRS財団の取り組みを歓迎する共同声明が取りまとめられている。わが国においても、ISSBの設立や将来的な基準開発に積極的に参画すべく、国際的な意見発信を強化していく必要がある。

◇◇◇

金融庁との懇談の後、IFRS財団の定款改訂案について意見交換するとともに、米国証券取引委員会(SEC)が公表した「気候変動開示に関する意見募集」への意見案を審議し、SECに提出することを了承した。

SEC「気候変動開示に関する意見募集」に対するコメントを発出

同タスクフォースは6月13日、「SEC『気候変動開示(Climate Disclosure)に関する意見募集』に対するコメント」を発出した。概要は次のとおり。

(1)国際基準開発への関与

IFRS財団における高品質で単一の国際的なサステナビリティ基準の開発に向け、SECが重要な役割を担うことを希望する。

(2)米国市場における気候変動開示のあり方

気候変動開示は国際的な議論の途上にあり、今は、企業の自主的開示の促進に力を注ぐべき段階である。SECが法定開示を求める場合でも、その範囲は国際的に合意できる必要最低限の内容に限定すべきである。

SECが開示基準やガイダンスを作成する場合には、TCFDの提言を参考に、産業横断的かつ統一的な必要最低限の開示内容を示したうえで、産業・セクターごとに任意の開示(推奨)項目を設けることを検討すべきである。

なお、気候変動開示に対する監査や外部保証の手続きについては、国際的なコンセンサスが得られておらず、その担い手についてもこれからの議論であり、現時点での拙速な導入は避けるべきである。

(3)気候変動以外のサステナビリティ情報開示

サステナビリティ要素のうち気候変動がグローバルに共通した課題であり、気候変動に最も高い優先度を置いて開示を進めるべきである。気候変動以外のサステナビリティ要素については、投資家・資本市場関係者にとって何が共通に重要かを特定したうえで、開示のあり方を検討すべきである。

【経済基盤本部】

「2021年6月24日 No.3504」一覧はこちら