経団連は6月22日、「認知症セミナー~認知症との共生に向けて」をオンラインで開催した。前号に続き、認知症に関する4社の企業事例の講演概要を紹介する。
■ 前川智明 エクサウィザーズ執行役員AIプラットフォーム事業部長
当社は、AIを用いて超高齢社会・労働人口減少等の社会課題の解決につながる製品を開発している。例えば、AIが銀行口座からの異常な出入金を自動で把握し、詐欺被害を防止する、あるいは認知機能の低下を検知するサービスを提供している。
また、ユマニチュードという介護ケア技法の普及に取り組んでいる。これは介護を経験や勘ではなく、ケアを体系化するもので、同技法の活用を通じ、介護者の負担軽減なども確認されている。
介護分野の製品開発において重要なことは、テクノロジーと現場の実態に関する理解との双方が融合されていることである。こうした製品の開発を通じ、今後も認知症の方の生活をより良くしていきたい。
■ 下河原忠道 シルバーウッド代表取締役
当社は、首都圏を中心にサービス付き高齢者向け住宅を運営している。認知機能が低下しても、社会生活を継続できる環境があれば、認知症は支障とならないことを住宅の運営を通じて、具現しようとしている。
具体的には、高齢者住宅のなかに駄菓子屋を設置し、地域の子どもたちとの交流などを通じ、地域共生社会の実現と、認知症の方の生きがいを見つける活動を行っている。
また、高齢者住宅にレストランを併設し、認知症の方が就労できる場も提供している。地域から認知症の方を分離するのではなく、認知症の方々でも地域で働く姿が見られる社会に変えていくことが重要である。
■ 小山遊子 イトーヨーカ堂経営企画室CSR・SDGs推進部総括マネジャー
当社は、ライフラインの機能的価値である「買う」「届ける」に加え、「集う」「食べる」「遊ぶ」「学ぶ」「相談する」などの価値の提供を通じて、地域の活力や課題解決につなげ、「地域になくてはならない存在」になることを目指している。
近年は、地域住民への支援活動や高齢者対応の強化のため、認知症サポーターの養成に力を入れている。
また、地域行政との連携を進めているほか、店舗のスペースを活用した「認知症カフェ」の実施など地域住民の認知症予防につながる活動や移動スーパーなどを活用した見守り活動も行っている。
こうした活動を通じて、地域との信頼の輪を広げ、地域共生社会を構築していきたい。
■ 山田博樹 みずほフィナンシャルグループお客さまサービス部企画チーム次長
当社は、超高齢社会に対応するため、認知症になる前も、なってからも、シームレスに円滑な金融取引ができる社会の実現を目指している。
顧客に接する社員には原則認知症サポーターになることを義務付けている。また、認知症の方への応対動画やハンドブック、地域包括支援センターとの連携マニュアルなど、独自の社内ツールを活用した社内教育にも力を入れている。
さらに、認知症になる前に将来の財産管理に備える「認知症サポート信託」などの商品提供や、高齢者見守りなど自治体との連携も進めている。
今後も地域に根差した金融機関として活動を展開していきたい。
【経済政策本部】