経団連は7月15日、「産学連携によるSTEAM教育の推進に向けた懇談会」をオンラインで開催し、東京大学生産技術研究所所長の岡部徹教授と同大学総長室アドバイザーを務める生産技術研究所の浦嶋將年研究顧問から、STEAM(注1)教育の推進を目的としたプラットフォーム構想について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ STEAMと人材育成(岡部氏)
不透明・不確実な時代に日本が生き残るためには、複眼的・俯瞰的な見方を持ち、かつ問題発見・課題解決力のある人材を育む教育が不可欠である。
STEAM教育は、今後の社会を生きるうえで不可欠となる科学技術の素養を涵養するとともに、幸福な人間社会を創造するうえで欠かせないデザインや芸術、教養も取り入れて、「知る」と「創る」を循環させるものであり、その推進が求められる。
政府もSTEAM教育推進の方向にかじを切りつつあるが、わが国は欧米と比べてSTEAM教育への取り組みが周回遅れの状況であり、このままではさらにその差が拡大しかねない。
STEAM教育を全国で広く実践するには、社会総出でSTEAM教育の推進に取り組むことが不可欠である。STEAM教育の推進を目指すプラットフォームに産業界、行政機関、学校、大学など多様なステークホルダーの参画が求められる。
産業界にはプラットフォームに対し、企業活動に関係するリアルな教育コンテンツ、リアルな体験ができる場、経験豊富な社会人と会える機会、指導・サポートする人材、資金の提供をお願いしたい。
STEAM教育に参画する企業は、社会貢献に積極的な企業として評価されるだけでなく、STEAM教育に社員を参画させることで学び直しの機会を与えることにもなる。
■ 「学びのイノベーション・プラットフォーム(仮称)」(浦嶋氏)
産業競争力懇談会(COCN)(注2)は、今年2月に公表した「社会で育てるSTEAM教育のプラットホーム構築」最終報告書に基づき、「学びのイノベーション・プラットフォーム(仮称)」を2021年10月に設立すべく、現在、準備を進めている。
同プラットフォームは、(1)STEAMコンテンツの収集、収録、配信(2)STEAM教育リーダーの人的ネットワークの構築(3)地域におけるSTEAM教育の共同取り組みの支援(4)STEAM教材の質的向上(5)現場の教師を支えるメンターの育成――の5つを主要な業務と想定している。
産業界と教育界が連携して、来るべき時代に備えて教育にイノベーションを起こしていくべきであり、業種を超えて数多くの企業が同プラットフォームに参画し、次世代の人材育成に貢献してほしい。
(注1)Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)/Liberal Arts(教養)、and Mathematics(数学)の頭文字をとった造語
(注2)日本の産業競争力を強化するため、科学技術・イノベーション政策や官民の役割分担などを政策提言として取りまとめ、その実現に取り組む産業界の有志による団体
【SDGs本部】