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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月2日 No.3512 グリーン・デジタル・対中政策をめぐる最近の欧州情勢 -ヨーロッパ地域委員会

経団連のヨーロッパ地域委員会(柵山正樹委員長、佐藤義雄委員長)は7月28日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、外務省の四方敬之経済局長と経済産業省の松尾剛彦通商政策局長から、最近の欧州情勢について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 外務省(四方氏)

四方氏

日EU両政府は、日EU・EPA(経済連携協定)を基盤として、グリーンやデジタル分野などにおける協力を拡大していくことで一致している。グリーンについては、EPAで貿易と持続可能な開発にかかる章において、貿易と環境における日EU協力の促進が定められている。これに関連して、5月末に開催された日EU定期首脳会議で、日EUグリーン・アライアンスが立ち上げられており、第三国における協力を含め、日欧連携を一層深化させていく。また、デジタルについて、日EU・EPAでは、ソースコード開示要求の禁止が規定されたものの、データの自由な流通にかかる規定は含まれておらず、発効後3年以内に再検討することとなっている。現在、データの自由な流通に関する規定に関して、EPAに含める必要性を再評価するため、予備的協議が開始されている。

EU中国関係については、EU企業にとって中国市場の重要性が増大するなか、昨年末には、EU中国包括的投資協定(CAI)が大筋合意に至るなど、比較的良好な関係が維持されていた。しかし、中・東欧諸国における一帯一路への進出や中国による先端技術企業の買収、新型コロナウイルスによる欧州経済の停滞、中国社会における人権問題への懸念の増大を受け、欧州における対中意識も変容し、EUは中国を「体制上のライバル」と位置付けるようになった。EUは、中国依存からの脱却を掲げている。また、3月には人権問題を理由とした対中制裁を実施し、欧州議会は5月にCAIの承認手続きを凍結する決議を採択した。日本政府として、引き続きEU中国関係を注視していくことが重要である。

■ 経産省(松尾氏)

松尾氏

EUは、グリーン、デジタルへの移行を通じ、新型コロナからの復興と経済成長の実現を目指す方針を打ち出している。グリーンや人権といった「共通価値」の実現に向けた取り組みを域外に対しても求めていく姿勢である。

グリーンについて、2030年55%排出量削減の実現に向け、7月、「Fit for 55パッケージ」として一連の法案を公表した。同法案は、気候変動対策が緩やかな国から輸入される特定製品に対し、CO2排出量に基づき課金する「炭素国境調整措置」の導入や自動車のCO2排出規制の強化などが盛り込まれている。これは新たな負担増となるため、低所得者層の反発とともに、WTOルールとの整合性が確保されるのかどうかが懸念されている。加盟国内でも意見が分かれているが、フォン・デア・ライエン欧州委員長の強いリーダーシップのもと、同法案は合意に至った。バイデン政権発足後、環境政策において米欧が接近するなか、日本も議論に参加すべく、日EUグリーン・アライアンスのもと、対話や協力を強化していくことが重要である。

デジタルについて、EUは、半導体の世界シェア拡大や中小企業および公共サービスのデジタル化を掲げている。日本としても、データ流通や半導体、AIにかかるルールの整備等について、EUと協力を進めていくことが必要である。

また、米国の政権交代以降、人権問題についても関心が高まっている。ドイツは6月、一定規模以上の企業に対し、人権デュー・ディリジェンス(DD)すなわち社内および取引先のサプライチェーン全体で人権配慮を義務付ける「サプライチェーン法案」を制定した。EU全体でも議論が加速しており、欧州委員会は、年内に人権DDを義務化する指令を公表する予定である。人権問題への対応策として、(1)人権侵害に関与した外国当局者への制裁(2)輸出規制(3)企業におけるサプライチェーン全体での人権配慮の義務付け――の3つがある。欧州における人権DD法制整備の背景の一つとして、欧州企業に対中取引を停止する際の法的根拠を与え、企業を矢面に立たせないようにする意図があるのではといわれている。日本も人権問題への対応について、検討を深める必要がある。

【国際経済本部】

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