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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月7日 No.3516 巨大な潜在力を備えるインド経済 -鈴木駐インド大使から聴く/南アジア地域委員会

経団連の南アジア地域委員会(冨田哲郎委員長、平野信行委員長)は9月15日、会合をオンラインで開催し、鈴木哲駐インド特命全権大使から、最近のインド情勢と日印関係等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ インドの新型コロナの感染状況は劇的に改善

インドの新型コロナウイルスの感染状況の「今」を正確に伝えると、今年4~5月の「第二波」では、1日当たり新規陽性者数は全土で約41万人に達したが、その後は急激に改善している。依然として1日当たり3万~4万人の感染者が確認されるものの、約7割が南部ケララ州で、首都デリーでは1日に50人を下回っている。現在の陽性率は2%程度で、デリーでは約0.1%で推移している。なお、インドの人口は日本の10倍以上であることにも留意が必要である。

インド政府は、酸素ボンベの提供等、日本政府・企業の支援を多としている。

最大1日1000万回の急ピッチでワクチン接種が進展しており、抗体保有率の上昇等とも相まって、感染状況は改善しているとみられる。デジタルツールも有効活用されている。とりわけ、ワクチン接種は、インド版マイナンバー「アダール」とひも付けることで、スマホ1つで接種予約から接種証明書の取得までを容易に完結できる仕組みが整備されている。オンライン診療も普及している。加えて、インド政府は新たな変異株発生に備えた病床確保、第三波に関する注意喚起等コロナ禍に着実に対応している。日本が参考にできる点も多い。

■ インド経済は回復基調、通商・産業政策に変化も

インド経済は2016年以降減速し、20年度の実質GDP成長率は、新型コロナの拡大や中印の国境対立の影響から40年ぶりのマイナス成長となった。ワクチン接種が進み21年はプラス成長を見込むが、半導体不足がサプライチェーンに与える影響等を注視する必要がある。

通商政策では19年のRCEP離脱表明以降、二国間関係を重視し、追求する。また、輸入代替を目指す「自立したインド」を掲げ、関税措置や隣国からの投資規制等の保護主義的政策を導入している。産業政策では、底堅い輸出と対内直接投資を背景に、電子部品、医療等13分野で生産連動型優遇策(PLI)スキームを推進している。品質と生産性の向上により、輸出・研究開発拠点としての地位確立を目指している。

■ 日本への期待と日印関係の展望

インドの成長エンジンはDX(デジタルトランスフォーメーション)とグリーンであり、IT(海底ケーブル敷設等)や環境(温室効果ガス削減等)の分野における日本の協力に対する期待は大きい。また、製造業やインフラで、日本からの技術移転による品質向上と雇用創出を求めている。自国人材の活用にも熱心であり、日本としては技能実習や特定技能を通じた受け入れ拡大を図りたい。

日本は、最大の円借款供与国であるインドに、インフラ等多くの支援を実施してきている。ビジネス環境の課題はあるが、進出日系企業数も年々増加している。企業関係者の意見を聴き、潜在力を活用できるようインド政府への働きかけを継続したい。

日印外交関係の基軸は、特別戦略的グローバル・パートナーシップであり、両国は民主主義に基づく基本的価値とインド太平洋地域における戦略的利益を共有している。また、日米豪印の枠組みにしっかりと向き合っていく必要がある。今後は、最重要課題である総理の訪印を早期に実現したい。その際、日印ビジネス・リーダーズ・フォーラムにおいて、産業協力等の議論がなされることを期待する。

【国際協力本部】

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