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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月7日 No.3516 年金制度改革の課題 -基礎年金の給付水準低下への対応を主題に/社会保障委員会年金改革部会

経団連は9月8日、社会保障委員会年金改革部会(橋爪宗一郎部会長)をオンラインで開催し、慶應義塾大学経済学部の駒村康平教授から、「年金制度改革の課題~基礎年金の給付水準低下への対応を主題に」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 基礎年金の給付水準低下に関する状況

2004年の年金改革で導入されたマクロ経済スライドには、制度の持続可能性を向上させ、世代間の公平性を担保する意義がある。しかし、デフレ状態が長期化し、マクロ経済スライドの適用が先送りされたため、国民年金の財政が悪化している。基礎年金のマクロ経済スライドをより長く適用する必要があり、基礎年金の給付水準は今後大きく低下する見通しである。

基礎年金の給付水準低下の影響は、国民年金に加入する自営業者や非正規労働者、厚生年金給付が小さい低所得の会社員ほど強く受ける。

基礎年金の給付水準低下を放置すると、年金収入に頼る高齢者のなかで生活保護受給者が将来増えるおそれがある。

■ 24年財政検証の選択肢
~(1)国民年金と厚生年金の財政調整(2)国民年金の45年加入

基礎年金給付水準の低下に歯止めをかけるため、マクロ経済スライドについて、厚生年金と基礎年金への適用を同時に終了すべきである。そのため、国民年金と厚生年金の財政調整(または両年金の積立金の統合)を行う必要がある。

さらに、平均寿命が延びている状況を踏まえ、保険料を支払う期間と年金を受給する期間のバランスを改善する観点から、国民年金の加入期間を40年から45年に引き上げるべきである。

これらの改革を行った場合、昨年12月に厚生労働省が公表した試算によれば、モデル年金の所得代替率は51.0%から60.5%に改善する(ケースⅢ〈出生中位・死亡中位〉の試算)。一部の高所得者の所得代替率は低下するが、賃金水準がモデル年金の3.2倍未満の多くの世帯で所得代替率が上昇する。

■ 人口動態の影響

足元の人口動態は、極めて危機的状況である。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、20年の出生数は84万人に低下し、新しい将来人口推計は従来の低位のレベルまで下がる可能性がある。24年の財政検証では、基礎年金の給付水準がさらに低下し、所得代替率も50%を下回る懸念がある。

まずは、被用者保険の適用拡大を徹底し、セーフティーネットの薄い非正規労働者を厚生年金に加入させる必要がある。そのうえで、基礎年金の給付水準低下に歯止めをかけるため、国民年金と厚生年金の財政調整や、国民年金の45年加入についても、真剣に考えるべきである。

【経済政策本部】

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