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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月21日 No.3518 2040年の社会保障 -社会保障委員会、医療・介護改革部会

経団連は9月16日、社会保障委員会(小堀秀毅委員長、鈴木伸弥委員長、西澤敬二委員長)、医療・介護改革部会(本多孝一部会長)の合同会合をオンラインで開催し、上智大学総合人間科学部の香取照幸教授から、「2040年の社会保障~医療・介護を中心に」について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 社会保障・税一体改革の歴史的意義と「ポスト一体改革」に向けて

社会保障・税の一体改革は、10年がかりで達成された。この改革は、超党派での政治合意によるものであったこと、加えて、子育て分野も含めた社会保障全体と財政の一体的な改革であったという点で、今後の社会保障政策を考えるうえでの一つのモデルとなる。一方で、消費税引き上げの遅れで財政健全化は未達成となるなど、改革はまだ完遂していない。今後の「ポスト一体改革」に向けて、「日本の経済社会全体の課題を解決する」という視点が不可欠である。社会保障の改革は、その前提となっている財政や経済の課題を同時に解決しなければ実現できない。改革を進めるには、経済・財政・社会保障が相互に連関していることを常に考える必要がある。

また、社会保障は利害が錯綜する分野である。そのため、改革を進めるにあたっては、「政争の具」とならないよう、今回の一体改革のように、政治的プロセスのなかで超党派での合意を形成していくことが重要である。

■ 今後の医療・介護制度改革に向けて

40年に向けて、医療・介護ニーズの増加により、日本の医療・介護費(対GDP比)の増大は不可避である。ニーズが増加する要因としては、(1)高齢化の進行(2)慢性疾患の増大による受療期間や要介護期間の長期化(3)医療技術の進歩による治療可能な疾患の拡大等――が挙げられる。しかし、増大する医療・介護ニーズを支える日本の人的・物的資源の水準は諸外国に比べて高いとはいえない。人口当たりの病床数は多い一方で、病床当たりの医師数が少なく、マンパワーが貧弱である。この背景には、日本の医療の提供主体が民間資本中心であるために生じる、医療機関間の役割分担や連携の不十分さ、機能の重複などがある。

そのため、医療・介護のサービス提供システムの構造改革が必要となる。病床の機能分化を進め、急性期病床への人的・物的資源の集中投入により入院期間を短縮する。病院・施設から在宅へ、医療から介護へのシフトを進める。医療だけではなく介護や福祉も含めたトータルのパッケージで考える「地域包括ケアネットワーク」の構築が必要である。また、平均寿命が延伸するなか、年齢の高まりにより医療費以上に増加する介護費のコントロールがより重要になってくる。

【経済政策本部】

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