経団連のイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会は9月29日、オンラインで会合を開催した。オンラインヘルスケアサービス普及に向けた課題と対策について、ソフトバンクの鴻池大介ヘルスケア事業推進部部長と、KDDIの田口健太サービス統括本部担当部長から、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ オンライン健康医療相談について
日本は、諸外国と比較して国民一人ひとりのヘルスケアに対するリテラシーが高くない。国民皆保険制度によって、誰もが一定の負担で充実した医療サービスを受けることができるがゆえに、健康について学ぶ機会が十分ではなく、正確な健康情報に容易に到達できる手段も乏しい。オンライン健康医療相談をはじめとしたオンラインヘルスケアサービスの浸透によって、国民のヘルスケアリテラシーを底上げする必要がある。こうしたサービスが浸透することで、自発的なケアによるさらなる健康増進、病気の早期発見・重症化予防につながる。オンライン健康医療相談の普及に向けて、国やその指定を受けた第三者機関が質の高いサービスを認定する制度を設け、利用者が数あるサービスのなかから自分に合う適切なものを選択できるようにすべきである。また、自治体や企業によるサービス活用を促進するために、導入費用を助成することも重要である。さらに、初診からのオンライン診療に必要な医学的情報について、オンライン健康医療相談等によってヘルスケアアプリに保存されたデータも、個人情報の取り扱いに留意しながら、活用対象とすべきである。
■ オンライン完結型の健診サービスについて
オンライン完結型健康診断サービスは、医療機関への訪問を必要とせず、例えば自宅にいながら指先からわずかな血液を採取するだけで、医療機関で採血した時と同じような血液検査の結果を得ることができる。新型コロナウイルスの感染拡大により、特定健診の受診率が低下している。オンライン完結型健診サービスは、医療機関への訪問を躊躇している人々も安心して利用できる。また、仕事上の制約等により、これまで医療機関を訪問して健診を受けることが難しかった人々にとっても、病気の早期発見や重症化予防の機会を得られる。特定健診非対象の若年層に対しても、気軽に検査を受けてもらい、若いうちから健康を意識することへの動機付けともなる。なお、オンライン完結型の健診サービスが特定健診の完全な代替となり得るかは議論が必要である。その際、少なくとも、特定健診事業に関連した取り組みのひとつとして評価される仕組みを導入すべきである。
【産業技術本部】