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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年10月28日 No.3519 最近のマネロン・テロ資金供与対策の動向

経団連は10月6日、FATF(金融活動作業部会)対日審査結果と今後の対応に関する説明会をオンラインで開催した。約190名が参加した。財務省国際局の陣田直也調査課長、髙木悠子資金移転対策室長から、8月末に公表されたFATF第4次対日相互審査の結果と、それを踏まえた政府の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ FATFによる第4次対日相互審査

マネーロンダリング(マネロン)・テロ資金供与は、近年、複雑化・グローバル化しており、国際連携の重要性が一層高まっている。こうしたなか、37カ国・2地域機関が加盟する多国間の枠組みであるFATFでは、マネロン、テロや大量破壊兵器の拡散(拡散金融)に寄与する資金供与への対策のため、国際基準を策定。そのうえで、基準の履行を担保するために相互審査を実施している。

2019年5月から、日本に対する4回目の相互審査が実施され、今年8月末に審査報告書が公表されている。今回は、法制度の実効性を中心に審査され、これまでの政府の取り組みに一定の成果が認められた。また、毎年、法令等の整備状況について改善状況を示すこと、日本の対策を一層向上させるため、金融機関等に対する監督、マネロン・テロ資金供与にかかる捜査・訴追等に優先的に取り組むことが勧告された。

審査報告書の公表を契機として、政府では、省庁横断の「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置し、改善が求められる今後3年間の行動計画を策定した。審査報告書で勧告された項目を中心に、法改正を含む対策とその期限などが明記されている。

■ 実質的支配者の透明性に関する施策

FATFが定める「勧告24」では、各国当局が法人の実質的支配者を把握し、法人の悪用を防止することを求めており、各国はその実施に取り組んでいる。しかし、依然として、法人がマネロン等に悪用される事例(詐欺事件の被害金を実体のない法人名義の口座に振り込ませる等)がみられるため、FATFでは、実質支配者の透明性に関するルールとその実施の強化が必要との認識のもと、20年から、「勧告24」の改訂に向けた議論を開始している。

「勧告24」への対応として、わが国では14年の犯罪収益移転防止法改正により、金融機関等に対して、顧客との取引時に実質的支配者情報を確認することを義務付けている。また、18年には公証人法施行規則改正により、会社設立時の定款認証において、実質的支配者となるべき者が暴力団員等でないか、公証人が確認する制度を導入した。

さらに、来年1月からは、金融機関等による実質的支配者の確認時の利用を想定し、株式会社の申し出により、商業登記所が当該会社の実質的支配者情報一覧の写しを発行する制度を開始する。

マネロン・テロ資金供与対策には、一般事業会社を含めた国内での連携が欠かせない。対策の重要性を理解し、事業活動における協力をお願いしたい。

【経済基盤本部】

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