本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
25.ミシガン州
1805年にインディアナ準州から切り出されたミシガン準州の領域を中心とする。37年に州に昇格し、連邦に加盟した。
州の領域は北のアッパー半島と南のロウワー半島に大別される。1957年、全長8キロメートルのマキナック橋が完成し、両半島が陸路で結ばれるようになった。五大湖のうちオンタリオ湖を除く4つに面している。
最大都市デトロイトは、米国自動車産業勃興の地である。同市を中心に、いわゆるビッグ3(ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラー〈現ステランティス〉)をはじめとする自動車関連企業が集積している。一方で、人口流出に歯止めがかからず、2020年の人口は1950年の約3分の1(64万人)にまで減少している。
州内に進出する日本企業数は500社を超える。日本企業による雇用者数も過去10年間で3割近く増え、約4万2000人となっている。
政治面では、都市部に集中する民主党支持層と郊外・農村部の共和党支持層とが拮抗するスイングステート(接戦州)の一つである。2016年の大統領選では0.3ポイント差でトランプ氏、20年は3ポイント差でバイデン氏が勝利している。なかでもデトロイト郊外のマコーム郡は、労働者階級の投票傾向を占う地域として注目されてきた。
26.ミネソタ州
州の領域の多くが、1803年に米国が購入した仏領ルイジアナの一部にあたる。49年、先に州に昇格したウィスコンシン準州、アイオワ準州から切り離された地域がミネソタ準州となり、58年に32番目の州に昇格した。
州内には多くの湖があり、10エーカー(約4ヘクタール)超の湖数だけで1万を超える。これを誇って、州の車のナンバープレートには「10,000 lakes」の文言が刻まれている。プロバスケットボールリーグ・NBAの看板チーム、ロサンゼルス・レイカーズ(Lakers)の名前も、州の最大都市ミネアポリスでのチーム設立時に命名され、移転後も引き継がれているものである。
そのミネアポリスと州都セントポールは、一体となって州内随一の都市圏を構成しており、特に小売業が盛んである。両市はミシシッピ川を挟んで隣り合う双子都市として有名だが、市境の半分程度は左岸の陸上で接している。
ミネアポリスは、2020年5月にジョージ・フロイド事件(白人警官が黒人男性拘束時に首を押さえつけて殺害した事件)が起こり、ブラック・ライブズ・マター運動拡大の起点となった都市でもある。
政治参加に積極的な州として知られ、20年大統領選では投票率80%を記録した(全米平均は67%)。政党としては民主党(正式には系列組織のミネソタ民主農民労働党)が優勢であり、大統領選では1976年から一貫して民主党候補を支持し続けている。特にレーガン大統領が49州を制して再選された84年の大統領選では、地元出身のモンデール候補(後の駐日大使)を支持した唯一の州だった。
27.オハイオ州
独立戦争で英国から米国に移譲された北西部領土のうち、最も東寄りの領域が州に昇格して成立した。1803年に連邦に加盟した17番目の州である。
人口は約1200万人で全米7位。州GDPも全米7位の約7000億ドルで、サウジアラビアや台湾と同等の規模である。
3Cとも呼ばれるコロンバス(州都)、クリーブランド、シンシナティが州経済の核である。自動車、航空機、産業機械といった製造業に強みを持つ。
エリー湖岸のクリーブランドは、70年にジョン・ロックフェラー氏がスタンダード・オイルを設立した地。今日でも州内では原油が生産されているが、生産量は全米12位である(日量6万5000バレル)。
北西部のカントン市は、プロアメリカンフットボールリーグ・NFLの前身が設立された街であり、その殿堂が立地している。
政治的にはスイングステートの一つであり、大統領選では1964年から2016年まで、14回連続で全米勝者と同じ候補者を支持してきた。しかし20年は8ポイント差でトランプ氏が勝利している。
【米国事務所】